ビザ申請のトリセツ

ここさえ押さえれば大丈夫!外国人雇用に必要な手続きと流れ

2019年5月3日

深刻な労働力不足やビジネスのグローバル化により、外国人を雇用したいという企業が増えています。しかし、これまで経験がなかった外国人の雇用には、不安がつきものだと思います。「人物の見極め方はどうすればいい?」「日本人従業員とは違った複雑な手続きが必要ではないか?」など、外国人雇用についてさまざまな疑問を抱えている事業者も多いでしょう。

今回は、外国人を雇用するときに気をつけたい注意点について、採用前、採用後に分けて、わかりやすく解説します。

採用前|これだけは確認しよう!

就労ビザの取得見込みについての見極め

外国人を雇用するときの最初のステップは、「採用面接」です。日本人を雇用する場合との違いは、能力、経験、人柄などの判断に加えて、自社で働くための在留資格(就労ビザ)を取得できるかを確認する必要があることです。

日本にいる外国人を採用する場合は、本人が持っている「在留カード」を見せてもらい、「在留資格」と「在留期間」を確認しましょう。就労できる在留資格を取得していても、在留期間の期限を過ぎていたらオーバーステイの外国人であり、不法滞在となりますので採用することはできません。
また、在留資格が「留学」や「家族滞在」で、在留カードに「就労不可」の記載がある場合は、日本で仕事をすることが認められていません。その場合は、カード裏面を確認しましょう。「資格外活動許可欄」に「原則週28時間以内」と明記されていれば、その範囲内でのアルバイトが認められています。
ほかにも、日本人と結婚している外国人の「日本人の配偶者等」という在留資格や、「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」といった在留資格を持つ外国人に関しては、職種の制限なく、日本人と同様に働くことができます。

海外在住の外国人を採用して日本に呼ぶ場合は、「就労ビザ」を取得できる見込みがあるかどうかを事前に確認することが重要です。就労ビザ取得の見込みを確認せずに、そのまま面接・内定と進めたとしても、就労ビザが取れなければ日本で働くことはできませんので注意しましょう。

 

採用予定の外国人が、就労ビザを取得できるかどうかの確認方法

それでは、海外在住の外国人が、就労ビザを取得できるかどうかはどうやって確認すればいいでしょうか?

ここでは一例として、就労ビザの中で一番多い「技術・人文知識・国際業務」ビザについて見ていきます。
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、大学卒業等の学歴のある者や一定の実務経験を有する者が、専攻内容や実務経験に関連する業務に従事する場合に取得する就労ビザです。外国人をオフィスワーカーとして採用するようなケースを想像してください。

理系の外国人を想定した「技術」ビザと、文系の外国人を想定した「人文知識・国際業務」ビザに分かれます。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の概要

専攻 在留資格の類型 従事できる仕事の具体例
理系 技術 システムエンジニア、プログラマー、航空機の整備、精密機械器具の設計・開発、土木・建設機械の設計・開発 etc.
文系 人文知識 経理、金融、総合職、会計、コンサルタント etc.
国際業務 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発等

「技術・人文知識・国際業務」ビザは、大学や専門学校で学んだ専門知識に関連する仕事に就く場合に取得できる就労ビザですので、「専攻内容に関連する職種での採用であるか?」が審査のポイントになります。特に、日本の専門学校を卒業して就職する場合は、関連性をより厳しく審査されます。

また、専攻内容に関連しない職種での採用や、外国人が大学・専門学校を卒業していない場合でも、一定の年数の実務経験を有する場合には採用できます。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)の許可基準

専攻 在留資格の類型 許可基準
理系 技術 業務に関連する大学・専門学校の卒業、または、実務経験10年以上
文系 人文知識 業務に関連する大学・専門学校の卒業、または、実務経験10年以上
国際業務 業務に関連する実務経験3年以上
ただし、大学を卒業した者が翻訳・通訳・語学の指導を行う場合は実務経験不要

このように、採用予定の外国人が「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得できるかどうかは、本人の学歴または実務経験を確認することである程度把握できます。
採用面接時に、大学・専門学校の卒業証明書のコピーを提出してもらう、履歴書に記載されている前職の在職証明書を添付してもらうなど、証明資料を収集できることまで確認できると安心です。

なお、「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請には、次のような書類が必要となります。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)申請の必要書類

在留資格認定証明書交付申請書(または、在留資格変更許可申請書)
採用理由書
卒業証明書・成績証明書(または、卒業証書のコピーと原本提示)
雇用契約書
会社の登記簿謄本
会社の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
会社の貸借対照表・損益計算書 etc.

※ 実務経験を証明する場合には、過去の勤務先の在職証明書など、職歴が確認できる資料の添付が必要です。

必要書類は、会社の規模や外国人本人の事情によって変わりますので、詳しくはお問い合わせください。

 

採用後|この手続きだけは忘れずに!

外国人の雇用契約書を作成するときに注意すること

外国人の面接後、採用を決めた場合には内定を出し、次のステップ「雇用契約書」の作成へと進みます。雇用契約書は、就労ビザ申請の際の添付資料としても必要となります。

基本的には、日本人の雇用契約書と同じ要領で作成します。就労ビザ申請との関係で注意すべきことは、次の3つです。

① 業務内容が外国人の学歴(または実務経験)と関連するものになっていること
② 給与額が日本人と同等程度であること
③ ビザ取得後に効力を有すると記載すること(例:「この雇用契約は日本で就労可能な在留資格の許可及び在留期間の更新を条件として効力を有する」)

 

外国人の就労ビザ申請手続きの流れ

就労ビザ申請の手続きは、海外在住の外国人を呼び寄せる場合はもとより、日本にいる外国人を採用する場合でも、確実な申請のため企業側で行うことが多いです。
採用のケース別に、申請の流れを紹介します。

① 海外在住の外国人を採用して呼び寄せる場合
  1. 企業が入国管理局に「在留資格認定証明書交付申請」の手続きをする
  2. 「在留資格認定証明書」が発行されたら、外国にいる内定者に送付
  3. 内定者本人が現地の日本大使館で就労ビザを申請
  4. 日本に入国後、入国管理局で「在留カード」を受け取る

なお、就労ビザの審査にかかる期間は1〜3カ月ほどです。内定が決まったら早めに申請をスタートすることをおすすめします。
また、在留資格認定証明書発行から3カ月以内に入国しなければ無効となるので、注意しましょう。

②日本ですでに働いている外国人を採用する場合
<留学生を新卒で採用する場合>
  1. 本人が入国管理局に「在留資格変更許可申請」の手続きをする(卒業年度の12月1日から可能)
  2. 在留資格変更許可の通知書が届く
  3. 卒業後、卒業証書を入国管理局に提示して「在留カード」を受け取る
<転職の場合>

転職の外国人を採用する場合、前職と職種が変わらなければそのまま就労することができます。ただし、万が一、自社での職種での就労が認められていない場合、就労ビザを更新する際に申請が不許可となる可能性があります。採用時に、入国管理局が前職の就労ビザで自社での職種に就けるかどうかを判断して交付する「就労資格証明書」を取得して確認しましょう。
この手続きは外国人本人でもできますが、確実な申請のため企業側で進めておくと良いでしょう。

 

外国人雇用の際に必要な届出と業務

外国人を新たに雇う場合には、雇用を管理する機関であるハローワークに届け出を出すことが法律で義務づけられています。ハローワークは企業から届け出された内容をもとに、雇用環境をより良くするためのアドバイスや指導を行うことになります。

なお、雇用していた外国人が離職する場合にも届け出が必要になるので注意をしてください。

外国人労働者は異なる文化や言語を持ちながら日本で職に就くわけですので、就労後も安心して雇用関係が続けられるよう、企業側は外国人労働者のための雇用管理をすることが求められています。

 

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