子ども法務

【コラム】冬休みにいじめの悩みを家族で話し合おう

2016年12月24日

2016年の暮れも近づいてきました。街はクリスマスのイルミネーションに彩られ、サンタさんを心待ちにする子どもの笑顔があふれています。
その一方で、今年もいじめで追い詰められた子どもが自殺するという悲しいニュースがありました。

楽しいはずの学校、いろんなことを学べるはずの学校、大切な一生の友達ができるはずの学校、そういう場をいじめによって奪われてしまう子どもたちがいます。文部科学省が実施した調査によれば、平成27年度の全国でのいじめ認知件数は22万4,540件で過去最高を記録しました。

今日は1年の中でいちばん、子どもたちと恋人たちがワクワクする日だから、ワクワクする機会を奪われてしまった子どもたちのことに、少しだけ思いを馳せてみます。

いじめの定義

いじめのやり方が時代とともに変わるように、文部科学省によるいじめの定義も変わってきています。

平成6年度からの定義

(1)自分より弱い者に対して一方的に、(2) 身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、(3)相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

平成18年度からの定義

当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。

平成25年9月に施行された「いじめ防止対策推進法」において、法律上はじめて、いじめの定義が定められました。

平成25年度からの定義

児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの。

こうして比べてみると、いじめが精神的なダメージを与えるものに変容し、今ではLINEなどインターネットによるいじめが大きな問題となっていることが読み取れます。
現代はインターネットやスマホの普及により、子どもたちがより閉鎖的で大人の目が届かない世界で過ごすことが多くなっています。いじめも外からは見えづらく、軽い気持ちでいじめを行っていることが多くなっています。

 

いじめの構造と背景

森田洋司氏の研究によれば、いじめは下図のような「四層構造」によって成り立っていると考えられています。

【いじめの構造】

 

また、いじめの背景には、①子ども、②家庭、③学校という3つの問題があることが指摘されています。

①子どもの問題

・対人関係の不得手
・思いやりの欠如
・達成感や満足感を得る機会の減少
・進学をめぐる競争意識
・将来の目標の喪失

②家庭の問題

・核家族、少子家庭増加による子どもの人間関係スキルの未熟さ
・保護者の過保護、過干渉による欲求不満耐性習得の不十分さ
・保護者の価値観の多様性による協調性、思いやり、規範意識の欠如

③学校の問題

・教師も子どもも多忙のため互いの交流が不十分なこと
・教師のいじめに対する認識の不足
・生活指導や管理的な締め付けの強さにより集団として異質なものを排除しようとする傾向が生じやすいこと

 

いじめの認知件数

文部科学省が実施した調査によれば、平成27年度の全国でのいじめ認知件数は22万4,540件で過去最高を記録しました。内訳は、次のとおりです。

いじめの認知件数の内訳

小学校:15万1,190件(前年度 12万2,721件)
中学校:5万9,422件(前年度 5万2,969 件)
高 校:1万2,654件(前年度 1万1,404 件)
特別支援学校:1,274件(前年度 963 件)
合計:22万4,540件(前年度18万8,057件)

学校別で見ると「小学校」の件数が圧倒的に多いですが、これを学年別で見ると「中1」が最も件数が多いことが分かります。

(出所)文部科学省, 平成 27 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(速報値)

小学校から中学校に上がり、学校の環境が変わることで見落としがちですが、自分の子どもの変化をしっかりと見ていなければいけない時期といえます。

 

いじめ防止対策推進法

2013年9月に施行された「いじめ防止対策推進法」第4条には、次のように書かれています。

第四条(いじめの禁止)

児童等は、いじめを行ってはならない。

当たり前のことではありますが、この当たり前のことが明記されたことに大きな意味があります。

また、同法の中では、いじめの早期発見のための措置(第16条)やいじめを発見したときの措置(第23条)についても明文化されています。

第十六条(いじめの早期発見のための措置)

学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校におけるいじめを早期に発見するため、当該学校に在籍する児童等に対する定期的な調査その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、いじめに関する通報及び相談を受け付けるための体制の整備に必要な施策を講ずるものとする。
3 学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該学校の教職員がいじめに係る相談を行うことができる体制(次項において「相談体制」という。)を整備するものとする。
4 学校の設置者及びその設置する学校は、相談体制を整備するに当たっては、家庭、地域社会等との連携の下、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利その他の権利利益が擁護されるよう配慮するものとする。

第二十三条(いじめに対する措置)

学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。
2 学校は、前項の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。
3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。
4 学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講ずるものとする。
5 学校は、当該学校の教職員が第三項の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たっては、いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう、いじめの事案に係る情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
6 学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に、援助を求めなければならない。

これらの条文で記載されていることは、いじめの早期発見のための措置と発見したときの措置として、理想的な対応です。

しかし、「いじめ防止対策推進法」はいわゆる基本法としての位置付けです。そこに期待される機能は、政策の方向付けとその推進、国民へのメッセージ の発信、制度・政策の体系化などです(参考:『基本法の意義と課題』, 2015, レファレンス平成27年2月号)。つまり、学校や教職員に対する強制力や違反した場合の罰則などはありません。

そこで、学校の考え方、先生との関係、保護者同士のつながりなど、当事者の子どもを取り巻く環境を踏まえて、解決策を見出す第三者の役割が重要となってくると考えます。

 

わたしたちにできること

当事務所では、いじめでつらい思いをしている子どもたちを助けたいと考え、保護者の方や子ども本人からの相談を受け付けています。

わたしたち行政書士にできることは、権利義務に関する文書作成の専門家として、苦しんでいる子どもや保護者の方と一緒に考える第三者になることです。たとえば、保護者の方がいじめの事実関係を「内容証明郵便」という文書の形で明らかにすることで、学校や教育委員会が改善の対応をすることがあります。

相談は無料ですので、子どもの学校でのいじめで悩んでいる方はお気軽にご連絡ください。

 

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