この記事では、高度人材外国人として永住申請を行う外国人向けに、申請のポイントなどを、わかりやすく解説します。
高度人材外国人とは
永住申請における高度人材外国人とは、出入国在留管理庁が定める「高度専門職ポイント」で、70点以上、または、80点以上の外国人をいいます。
高度人材ポイントの計算方法を知りたい方は、こちらの記事を見てください。外国人の方が、自分で正しい点数計算ができるよう、丁寧に解説しています。
▼ 行政書士がわかりやすく解説!高度人材ポイントの計算方法
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高度人材ポイントの計算方法 - 行政書士がわかりやすく解説!
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最近の永住申請の傾向(2022年1月)
(1)審査の厳格化
2019年5月31日に「永住許可に関するガイドライン」(出入国在留管理庁)が改訂されました。これにより、2019年7年以降、永住申請に必要な書類が増え、審査が厳格化しました。
特に、年収、税金の支払い状況、社会保険(年金・健康保険)の支払い状況については、細かく審査されます。
たとえば、次のようなケースでは、永住不許可となる可能性が高いです。
永住不許可となる可能性が高いケース
① 直近5年間の中に年収が基準額(目安:300万円)より低い年がある
② 住民税を支払っていない、または、支払いが遅れたことがある
③ 国民健康保険、国民年金を支払ってない、または、支払いが遅れたことがある
▼参考:永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁)
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyukan_nyukan50.html
(2)高度人材外国人の優遇
審査が厳しくなる一方、高度専門職ポイントの点数をクリアすると、通常より短い年数で永住申請ができる制度があります。これは、永住許可を希望する外国人にとって魅力的な制度です。
しかし、点数をクリアしていることに気づいていない人も多いです。
たとえば、高度専門職ポイントは、30歳、35歳、40歳と、年齢により得点が変わります。
「もっと早く知っていれば、永住申請できたのに」とならないよう、自分の点数を正確に知ることが永住許可への近道となります!
▼【動画】よく分かる!『永住許可申請の取扱説明書-トリセツ-』
高度人材外国人は何年で永住申請できるの?
通常、外国人が永住申請を行うためには、日本に「10年」以上滞在していることが必要です。(※日本人や永住者と結婚している場合などは除く。)
しかし、高度専門職ポイントの得点が、70点以上の場合は「3年」、80点以上の場合は「1年」で申請できます。
まとめ:永住申請を行うために必要な年数
申請条件 | 必要な在日年数 | 年収の審査対象期間 |
通常の永住申請 | 10年 | 直近5年 |
高度専門職ポイント70点以上 | 3年 | 直近3年 |
高度専門職ポイント80点以上 | 1年 | 直近1年 |
通常の永住申請
日本に来てから「10年」以上が経ち、かつ、そのうち「5年」以上は就労していることが必要です。
※日本人や永住者と結婚している場合、定住者ビザの場合などは、必要な年数が短くなります。
高度専門職ポイント70点以上の永住申請
次のどちらかの条件を満たしていることが必要です。
①「高度専門職」ビザで日本に3年以上滞在している
②永住申請をする時点と3年前の時点で、いずれも70点以上をクリアしている
(例)2022年3月に申請するとしたら、2022年3月と2019年3月のいずれの時点でも70点以上であれば、永住申請が可能です。
高度専門職ポイント80点以上の永住申請
次のどちらかの条件を満たしていることが必要です。
①「高度専門職」ビザで日本に1年以上滞在している
②永住申請をする時点と1年前の時点で、いずれも80点以上をクリアしている
(例)2022年3月に申請するとしたら、2022年3月と2021年3月のいずれの時点でも80点以上であれば、永住申請が可能です。
よくある誤解
- Q -
高度人材外国人の優遇措置を使って永住申請できるのは、「高度専門職ビザ」を持っている人だけでしょうか?
- A -
普通の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)を持っている人でも、ポイント点数をクリアすれば、高度人材外国人として永住申請ができます。
永住申請をするために、「高度専門職ビザ」に変更する必要はありません。
次の図に、パターンを整理しました。
申請時点のポイント | 申請時点のビザ(在留資格) | 永住申請の条件 |
80点以上 | 高度専門職1号(ロ) | 在日1年で申請できる |
技術・人文知識・国際業務 | 申請1年前の時点で80点以上あれば申請できる | |
70点以上80点未満 | 高度専門職1号(ロ) | 在日3年で申請できる |
技術・人文知識・国際業務 | 申請3年前の時点で70点以上あれば申請できる |
ポイント計算で70点以上の場合
出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。)に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア .「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること。
イ. 3年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。
ポイント計算で80点以上の場合
高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア. 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ. 1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。
- Q -
自分の高度専門職ポイントの点数は、どうやって確認すればいいでしょうか?
- A -
まずは、出入国在留管理庁のホームページに掲載されている『ポイント計算表』を使って、自分で計算してみてください。
ただし、分かりづらい項目や、よく見落とされる項目などもあります。ポイント計算に不安のある方は、お問い合わせください。
▼参考:高度人材ポイント制とは?(出入国在留管理庁)
https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/newimmiact_3_system_index.html
(出所)高度人材ポイント制による優遇制度, 出入国在留管理庁ホームページ
自分の高度人材ポイントが何点か?すぐに知りたい方は、以下の「高度人材ポイント計算ツール」をご利用ください。
▼ 高度人材ポイント計算ツール(無料)
[URL]https://calico_legal.com/calculation
※ ポイントの点数は、証明資料などを見ないと正確には把握できません。あくまで、回答者の記入に基づく仮の得点とご理解ください。
当事務所で申請した方のケース(イメージ)
日本に来て8年。日本語学校(1年間)を卒業したあと、日本の大学(4年間)に入学し、就職して3年目の29歳。
学歴 | 大学を卒業 | 10点 |
職歴 | 3年 | 5点 |
年齢 | 29歳 | 15点 |
年収 | 400万円 | 10点 |
ボーナス | 日本の大学を卒業 | 10点 |
日本語能力試験N1合格 | 15点 | |
法務大臣が告示で定める大学 | 10点 | |
合計 | 75点 |
このように、母国または日本の大学・大学院を卒業して、日本語能力検定N1・N2を持っている方の場合、ご本人が意識していなくても高度外国人材に該当し、早ければ就職3年目で永住権を取得できる可能性があります。
より具体的な事例を知りたい人は、こちらの記事をご参照ください。
▼ 【解説】事例でわかる!高度人材外国人の永住許可申請
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【解説】事例でわかる!高度人材外国人の永住許可申請
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高度人材外国人として永住許可申請する場合の注意点
ポイント計算の中で間違えやすいのが「年収」です。申請時点以前の年収と将来の年収の両方を証明する必要がありますが、将来の年収には残業代を含めることができないため、注意が必要です。
申請時点以前の年収 | すでに受け取った収入ですので残業代も含めることができます。 |
将来の年収 | 残業代は入れることができません。基本給、賞与(ボーナス)など確実に受け取ることが出来る収入だけで、勤務先から「収入見込額証明書」を発行してもらう必要があります。 |
当事務所では、「収入見込額証明書」の書式(Microsoft Excelで作成したもの)を無償で提供しています。