街や地域を知ることは、「暮らし」と「ビジネス」のはじめの一歩です。銀座、日本橋、月島という多彩な顔を持つ東京都中央区。データから読み解く地域の本当のカタチとは・・・?
2015年4月に内閣官房まち・ひと・しごと創生本部が発表したサービス、地域経済分析システム「RESAS:リーサス」をご存知でしょうか。「Regional Economy and Society Analyzing System」の略で、産業構造、人口動態、人の流れなどのビッグデータを可視化できるシステムです。発表当時は、「人口マップ」「観光マップ」「自治体比較 マップ」の3つのメニューしかなかったのですが、「RESAS2.0」にブラッシュアップされ、分析できるメニューも増えています。
●地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」:https://resas.go.jp/
このRESASを使って、行政書士の業務のひとつである会社設立にも関係する中央区の「創業比率」を見てみたいと思います。やり方は、RESASの[トップページ]→[自治体比較マップ]→[創業比率]と進み、[市町村単位で表示する]にチェックを入れて、データを見たい地域(ここでは東京都中央区)を選択します。
2009年〜2012年の東京都中央区の創業比率は2.92%で、全国平均1.84%や東京都平均の2.06%を上回っています。「自治体比較 マップ」はその名のとおり全国の他の市区町村と比較ができるので、上のグラフでは、東京都内で最も創業比率が高い武蔵野市(3.19%)も加えています。両市を比較すると、2009年までは中央区の方が創業比率が高く、2009年以降に武蔵野市に追い抜かれたことが分かります。武蔵野市といえば吉祥寺がある地域です。吉祥寺は住みたい街NO.1にも輝いている街だから、飲食店やサービス業が増えているのかな?!などと理由の仮説を立ててみると、データを見るのが楽しくなります。
折れ線グラフの下には、創業比率の都道府県内と全国での順位が出てきます。
中央区は東京都の中で4位、全国では43位であることが分かります。
では、全国1位の街はどこでしょう?!
「滋賀県竜王町(14.49%)」
この街に地域活性化の鍵が隠されているのではないかと考え、調べてみました。その結果、2010年に三井アウトレットパークが開業したことが分かりました。全国2位の「徳島県藍住町(6.33%)」は徳島県のベッドタウンとして開発が進み、四国地方で今後20年間で人口が増加すると推計される2つの市町村のうちの1つです。その他には、「岩手県陸前高田市(5.46%)」や「岩手県釜石市(5.06%)」など、東日本大震災からの復興を目指す街が上位にあることが特徴的です。これら3つの街に共通することは、滋賀県竜王町は大型ショッピングモールの開業により、徳島県藍住町はベッドタウン開発により、岩手県陸前高田市と釜石市は東日本大震災により、地域の雇用環境が激しく変化したことです。
この結果を数字からだけ見ると、三井やイオンなどの大型ショッピングモールが誕生することは地域活性化にとって正の影響を及ぼすと考えられそうです。一方、総務省統計局が発表している「従業員の地位別就業者数」をもとに、自営業を行っている人数の推移を見ると、全国に大型ショッピングモールが作られていくのと反比例して、自営業主はどんどん減っていることが分かります。
(出所)総務省統計局「従業員の地位別就業者数」をもとに当事務所作成
このことは、この先ますます超高齢化が進む社会にとってどんな影響を及ぼすでしょうか。
たとえば、65歳〜70歳代くらいまでの自分の足で動けるアクティブシニアにとって、買い物から食事まで1箇所で出来る大型ショッピングモールは大変ありがたい場所です。一方、自宅の近くにあり、気軽に挨拶をし合えるような自営業者や個人商店は、地域のセーフティネットの一面を持っているのではないかと思います。
この視点から考えると、起業にチャレンジする人が増え、スモールビジネスが持続できるような社会を作っていくことが、超高齢化社会が進み続けていく地域の持続にとって大切なことなのかもしれません。