民泊、カーシェアリング、家事代行など、近年、シェアリングエコノミービジネスが活況です。シェアリングエコノミーの市場規模は、PwC英国が2014年に推計した調査によると、2013年に全世界で150億ドルに及び、2025年には3350億ドルにまで拡大するとされています。
これから「新規参入して取り組んでいこう!」とお考えの企業や個人の方も多いと思いますので、行政の許可が必要か?という視点から、事業をはじめるときの注意点をまとめます。
シェアリングエコノミーとは
シェアリングエコノミーは、次のように定義されています。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会による定義
シェアリングエコノミーとは、インターネット上のプラットフォームを介して個人間でシェア(賃借や売買や提供)をしていく新しい経済の動きです。シェアリングエコノミーは、おもに、場所・乗り物・モノ・人・スキル・お金の5つに分類されます。
(出所)一般社団法人シェアリングエコノミー協会ホームページ
PwC英国による定義(2017年)
個人および集団が、活用度の低い資産から収入を得られる仕組み。この方法では、現物資産がサービスとして共有される。例えば、車の所有者がその車を使わない時に誰かが貸し出す、あるいはマンションの所有者が旅行中にその部屋を貸し出すというような場合である。
(出所)「シェアリングエコノミーまるわかり」, 野口功一著, 日経文庫
❷ シェア × 空間|[例]ホームシェア、農地、駐車場、会議室
❸ シェア × スキル|[例]家事代行、介護、育児、知識、料理
❹ シェア × 移動|[例]カーシェア、ライドシェア、コストシェア
❺ シェア × お金|[例]クラウドファンディング
(出所)一般社団法人シェアリングエコノミー協会, 公開資料
シェアリングエコノミーに関わる営業許可
シェアリングエコノミーを始めるからといって、それだけで何らかの規制を受けるわけではありません。他方、新しいビジネス構造を持つシェアリングエコノミーは、許認可制により品質保証と参入障壁が築かれている既存産業の規制の枠を超えてしまうことがあります。
シェアリングエコノミーに関するビジネスについて、営業するために許認可が必要かどうかを考えると、次の3つの類型に大別することができます。
① 営業するためには許認可を取得することが必要なケース
② 営業するために許認可の取得が必要か明示されていないケース
③ 許認可の取得が必要ではないケース
たとえば、次のような問題が考えられます。
- 民泊 → 旅館業許可等が必要か?(詳しくはこちら)
- 古物のシェア → 古物営業許可が必要か?
- 乗り物のシェア → 道路交通法に抵触しないか?
- お金のシェア → 貸金業法に抵触しないか?
シェアリングに係る個別取引の関係法令
シェア形態 | 主な関連法令 |
自動車(ライドシェア) | 道路運送法 自動車損害賠償保障法 旅客自動車運送事業運輸規制 |
自転車(貨物運搬シェア) | 貨物自動車運送事業法 自動車損害賠償保障法 |
自動車(カーシェア) | 道路運送法 自動車損害賠償保障法 道路運送車両法 |
宿泊所(自宅の一部) | 旅館業法 旅行業法 |
施設(会議室等) | ー |
労働力 | 労働者派遣法 |
知識・コンサル | ー |
料理 | 食品衛生法 |
観光ガイド | 通訳案内士法 道路運送法 旅行業法 |
農地 | ー |
工場 | ー |
資金 | 貸金業法 |
(出所)「シェアリングエコノミービジネスについて」, 一般社団法人シェアリングエコノミー協会
また、従来の規制や仕組みでは対応できず、グレーゾーンとなっている点についても、解消する取り組みが進んでいます。
(出所)「シェアリングエコノミー促進に向けた 経済産業省の取組」, 経済産業省 商務情報政策局, 平成30年3月
このように、シェアリングエコノミービジネスと法規制等のルールの整合性を完璧に取るするまでには、もう少し時間がかかりそうです。だからこそ、そこにビジネスチャンスが生まれる可能性があり、面白い領域であると考えることもできます。既存産業の規制を理解した上で、必要な手続きを見極め、折り合いをつけながら事業を進めていくことが必要といえます。