令和3(2021年)年末現在、日本には約246万5,000人の中長期在留者がいます。そのうち、約27万5,000人(10.0%)が在留資格「技術・人文知識・国際業務」で滞在しています。これは、日本で働くことを目的とする就労ビザの中では一番多い人数です。
在留資格別在留外国人の構成比(令和3年末)
この記事では、外国人を採用する企業向けに、「技術・人文知識・国際業務」ビザについて、わかりやすく解説します。
CALICO LEGAL行政書士事務所では、オンライン申請の範囲拡大に伴い、全国の地方入国管理局への申請取次に対応可能です。
はじめて外国人を雇用する企業の方も、お気軽にご相談ください。
技術・人文知識・国際業務ビザとは?
日本でどういう活動ができるの?
入管法では、「技術・人文知識・国際業務」について、次のように定められています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動
(入管法別表第一の二の表)
この条文から、技術・人文知識・国際業務ビザでは、次の3つのどれかに該当する業務に従事できることが分かります。
① 自然科学(理系)の専門技術・知識を必要とする業務
② 人文科学(文系)の専門技術・知識を必要とする業務
③ 外国文化に基盤を有する思考・感受性に基づく専門的能力を必要とする業務
ポイントは、専門技術、専門知識、専門的能力を必要とする業務に限られるという点です。
では、具体的にはどういう仕事について専門性があると認められるのでしょうか?
それぞれの類型について、該当する可能性が高いのは、次のような仕事です。
類 型 | 具体的な仕事 |
① 自然科学(理系) | エンジニア、システム開発、ソフトウェア開発、プログラミング、CADを用いた設計、工法開発、電子回路設計 etc. |
② 人文知識(文系) | 海外市場調査、現地法人との契約、官公庁との折衝、予算管理、原価計算、マネジメント、外国語の文書作成、文書翻訳、通訳 etc. |
③ 外国文化に基盤を有する思考・感受性 | 通訳、翻訳、語学指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾、室内装飾、デザイン、商品開発 etc. |
接客、清掃、荷物運搬などの単純労働には従事できないので、ご注意ください。
外国人を採用する場合の流れ
日本企業が外国人を採用する場合、次の4つのケースが考えられます。
(1)海外にいる外国人を採用して日本に呼び寄せる
(2)日本にいる留学生(大学生・専門学校生など)を採用する
(3)日本の別の会社で働いている外国人を中途採用する
(4)永住者、日本人の配偶者などを採用する
それぞれのケースについて、採用から勤務開始までの流れを説明します。
(1)海外にいる外国人を日本に呼び寄せる場合
海外にいる外国人を採用して日本に呼び寄せる場合、「在留資格認定証明書交付申請」という手続きを行います。
「在留資格認定証明書」とは、招待状のようなもので、その外国人が在留資格を取得できることを証明する資料です。
これがあると、海外の日本大使館で査証(ビザ)をもらいやくなるなど、来日するときの手続きがスムーズに済みます。
勤務開始までの流れ
① 採用決定 ➡︎ 「雇用契約書」(労働条件通知書)作成
② 入国管理局に「在留資格認定証明書交付申請」を提出 ➡︎ 審査
③ 許可通知 (※ 万が一、不許可の場合は理由を確認して再申請)
④ 「在留資格認定証明書」を母国にいる本人に送付
⑤ 本人が本国の日本大使館に「査証(ビザ)」を申請
⑥ 来日 ➡︎ 到着空港で「在留カード」を受け取る
⑦ 勤務開始
(2)日本にいる留学生を採用する場合
留学生を採用する場合、「在留資格変更許可申請」という手続きを行います。
これは、在留資格「留学」を「技術・人文知識・国際業務」に変更する手続きです。
留学生の在留資格変更許可申請は、3月に卒業する場合、前年の12月から申請できますが、正式な許可は卒業後になります。
勤務開始までの流れ
① 採用決定 ➡︎ 「雇用契約書」(労働条件通知書)作成
② 入国管理局に「在留資格変更許可申請」を提出(卒業前年の12月から可能) ➡︎ 審査
③ 許可通知 (※ 万が一、不許可の場合は理由を確認して再申請)
④ 卒業後に正式な許可を受ける(卒業年の3月末)
⑤ 入国管理局で新しい「在留カード」を受け取る
⑥ 勤務開始(4月~)
(3)日本の別の会社で働いている外国人を中途採用する場合
前職と同じ仕事に従事する場合
この場合は、特に手続きは不要ですが、「就労資格証明書」を取得しておくと安心です。
「就労資格証明書」とは、採用する外国人が持っている在留資格で、これから従事する仕事ができることを証明する資料です。
勤務開始までの流れ
① 採用決定 ➡︎ 「雇用契約書」(労働条件通知書)作成
② 入国管理国に「就労資格証明書交付申請」を提出 ➡︎ 審査
③ 「就労資格証明書」を取得
④ 勤務開始
前職と違う仕事に従事する場合
この場合は、「在留資格変更許可申請」の手続きが必要です。
勤務開始までの流れ
① 採用決定 ➡︎ 「雇用契約書」(労働条件通知書)作成
② 入国管理局に「在留資格変更許可申請」を提出 ➡︎ 審査
③ 許可通知 (※ 万が一、不許可の場合は理由を確認して再申請)
④ 入国管理局で新しい「在留カード」を受け取る
⑤ 勤務開始
「技術・人文知識・国際業務」ビザ申請のポイント
まず、「技術・人文知識・国際業務」ビザの許可のポイントは、次の3つです。
- 仕事内容
在留資格で認められていること - 申請する外国人
従事する仕事内容に関する学歴、または、実務経験があること - 会社
経営に安定性・継続性があること
申請では、これらを証明することになりますが、必要な資料は企業のカテゴリーによって異なります。
企業のカテゴリーとは?
「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請では、会社の規模に応じて4つのカテゴリーに分類されます。
カテゴリー1とカテゴリー2の企業は提出書類が大幅に軽減され、審査期間の面でも優遇されます。
カテゴリー1 | 上場企業、国・地方公共団体、独立行政法人など ⑴ 日本の証券取引所に上場している企業 ⑵ 保険業を営む相互会社 ⑶ 日本又は外国の国・地方公共団体 ⑷ 独立行政法人 ⑸ 特殊法人・認可法人 ⑹ 日本の国・地方公共団体の公益法人 ⑺ 法人税法別表第1に掲げる公共法人 ⑻ 一定の条件を満たす中小企業等 |
カテゴリー2 | 比較的規模の大きい中小企業 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人 |
カテゴリー3 | 一般的な規模の中小企業 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) |
カテゴリー4 | 創業まもない企業など 左のいずれにも該当しない団体・個人 |
提出資料
〇 在留資格認定証明書交付申請書
〇 四季報の写し(または、日本の証券取引所に上場していることを証明する文書の写し)
〇 専門学校の卒業証明書(※ 大学卒の場合は不要)
〇 在留資格認定証明書交付申請書
〇 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるもの)の写し
〇 専門学校の卒業証明書(※ 大学卒の場合は不要)
〇 在留資格認定証明書交付申請書
〇 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるもの)の写し
〇 申請人(採用する外国人)の活動内容などを明らかにする資料
・申請人を雇用する場合:労働条件を明示する文書(雇用契約書、労働条件通知書 etc.)
・申請人が役員に就任する場合:役員報酬を定める定款の写し、または、役員報酬を決議した株主総会の議事録の写し
〇 申請人の学歴・職歴などを証明する文書
・履歴書
・専門学校・大学・大学院などの卒業証明書
・実務経験を証明する文書(在職証明書 etc.)
〇 登記事項証明書
〇 会社案内(勤務先となる会社の沿革、組織、事業内容、主要取引先などが分かる資料)
〇 直近年度の決算文書の写し
〇 在留資格認定証明書交付申請書
〇 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるもの)の写し
〇 申請人(採用する外国人)の活動内容などを明らかにする資料
・申請人を雇用する場合:労働条件を明示する文書(雇用契約書、労働条件通知書 etc.)
・申請人が役員に就任する場合:役員報酬を定める定款の写し、または、役員報酬を決議した株主総会の議事録の写し
〇 申請人の学歴・職歴などを証明する文書
・履歴書
・専門学校・大学・大学院などの卒業証明書
・実務経験を証明する文書(在職証明書 etc.)
〇 登記事項証明書
〇 会社案内(勤務先となる会社の沿革、組織、事業内容、主要取引先などが分かる資料)
〇 直近年度の決算文書の写し(新規事業の場合は事業計画書)
〇 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする資料
上記は必要最小限の提出資料です。申請人(採用する外国人)や会社の状況に応じて、補足資料を添付します。
例)採用理由書、担当する職務と学歴の関係性を説明する文書、専門学校・大学・大学院などでの履修状況が分かる資料(成績証明書など) etc.
就労ビザ申請を専門家に依頼するメリット
就労ビザ申請は、外国人を採用する企業も手続きをすることができます。
他方、専門家に依頼するメリットとして、次の3つがあります。
① 複雑なケースでも許可を取得する確率が高まる
② 書類作成や入国管理局に行く手間を省くことができる
③ コンプライアンス上の問題を予防することができる
また、当事務所では、会社のご希望があれば、将来的に就労ビザ申請を社内で行うことが出来るよう、担当者へのレクチャーやマニュアル作成の支援をします。
外国人を採用するにあたり、ご不明なことがあれば、お気軽にお問い合わせください。