超少子高齢化による生産年齢人口の減少、深刻な人出不足、日本の社会課題を解決する手段のひとつとして、外国人に対する期待は高まっています。しかし、外国人を雇用したことのない企業にとっては、期待よりも「本当に雇って大丈夫だろうか?」という不安の方が大きいというのも本音です。漠然とした不安によって企業がチャンスを逃すこと、外国人が就職先に出会えないことは、もったいないです。
そこで、当事務所が蓄積してきた就労ビザ申請の事例に基づくコツを伝えることで、はじめて外国人を雇用する企業の役に立ちたいと考えました。できるかぎり分かりやすく、また、出入国在留管理庁の最新情報を踏まえて随時更新していきますので、肩の力を抜いてお読みください。企業の適法な外国人雇用と、外国人が安心して働くことができる環境づくりの一助となれば幸いです。
このページで解決できること
- 外国人を雇うとき、まず何から手を付ければいいか知りたい
- 「就労ビザ」に関する基礎知識を短時間で手に入れたい
- 法律に違反せず外国人を雇用するためのポイントを理解したい
まずはこれだけ!
はじめての外国人雇用、3つのポイント
これからはじめて外国人を雇用する企業の経営者や人事担当の方は、まず、次の3点を常に忘れないでください!
外国人雇用の3つのポイント
① 外国人は在留資格で認められる範囲内の業務しかできない
② 外国人本人も自分の在留資格について正確に知っているわけではない
③ 万が一、不法に就労させると企業も罪に問われる可能性がある
外国人雇用の怖いところは、「知らないうちに法律に違反していた」という状況になる可能性があることです。
企業の立場に立つと、在留資格のことは外国人本人が一番よく知っているだろうと思いがちですが、本人が正確に理解していることはまれです。外国人を雇うときは、在留制度や入管法のルールについて、企業側もきちんと理解しておくことを心掛けましょう。
「ビザ」と「在留資格」ってどう違うの?
週28時間以内の制限を超えてアルバイトをしたことは、在留資格の変更や更新のときに提出する住民税の課税証明書・納税証明書などに記載される収入額により、ほぼ確実に入管に知られます。それにより、留学ビザの更新が不許可となったり、卒業後に就職が決まったのに就労ビザへの変更が不許可になるケースもあります。
そうだ、「在留カード」を確認しよう!
日本に3ヶ月以上在留している外国人は、「在留カード」という身分証明書を持っています。「在留カード」を見れば、在留資格の種類といつまで日本に滞在できるかが分かります。
外国人は、日本にいる間は「在留カード」を常に携帯することが義務付けられています。外国人を採用するときは、まず「在留カード」を見せてもらいましょう。
なお、観光や親族訪問などを目的に、3ヶ月以内の「短期滞在」ビザで来日する外国人は、「在留カード」を持っていません。
「短期滞在」ビザの外国人は、そもそも日本で報酬を得る活動はできませんので、原則として、雇用できるのは「在留カード」を持っている外国人と考えて問題ありません。
その仕事、在留資格で認められていますか?
外国人が日本で行うことができる活動は、在留資格で認められている範囲内に制限されます。逆にいうと、在留資格で認められていない活動を外国人にさせることはできません。
たとえば、システムエンジニアの仕事するために「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている外国人に工場で単純作業をさせたり、シェフの仕事をするために「技能」の在留資格を持っている外国人にホールでの接客をさせることはできません。外国人を雇い入れるときは必ず、「この仕事はどの在留資格で認められる活動なのか?」を確認しましょう。
主な在留資格と日本で就労できる業務の関係
在留資格 | 日本で就労できる業務 |
永住者 日本人の配偶者 定住者 |
どんな仕事でも就労可能です。また、週何時間までという制限もありません。 |
技術・人文知識・国際業務 |
外国人本人が持つ専門的知識・技術を活かせる仕事にのみ従事することができます。 |
留学 家族滞在 |
在留カードの裏面に「資格外活動許可」のハンコが押してあれば、週28時間までアルバイトが可能です。 |
特定活動 | さまざまな種類がありますので、どういう活動が認められているか確認が必要です。 |
短期滞在 | 在留カードを持ってなく、報酬を得る就労活動を行うことはできません。 |
日本で働いている外国人を中途採用する場合、外国人本人から「まだ在留期間が残っているから、ビザ関係の手続きをしなくてもすぐ働くことができます!」と言われることがあります。また、人材紹介会社がきちんと説明をせずに、外国人材を紹介してくることもあります。
しかし、「外国人本人が大丈夫と言った」、「人材紹介会社が問題ないと言った」などは、不法就労を正当化する理由にはなりません。リスクを負うのは外国人を受け入れた企業です。知らないうちに法律に違反していたとならないよう、十分に注意しましょう。
「不法就労助長罪」に問われないために
会社が「在留カード」を確認せずに外国人を採用し、結果的に在留資格で認められていない仕事をさせてしまった場合、「不法就労助長罪(入管法73条)」という罪に問われる可能性があります。
【参考】出入国管理及び難民認定法 第73条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
外国人をはじめて雇用する場合、採用時の在留資格の見極めが重要です。不安があれば、このタイミングで専門家に相談すると良いでしょう。
「不法就労」とは?:不法就労となる3つのパターン
① 不法滞在者や被退去強制者が働くケース
(例)密入国した人が働く/在留期限の切れた人が働く/退去強制がすでに決まっている人が働く etc.
② 入国管理局から働く許可を受けていないのに働くケース
(例)観光ビザなど短期滞在目的で入国した人が働く/資格外活動の許可を受けていない留学生や難民認定中の人が働く
③ 入国管理局から認められた範囲を超えて働くケース
(例)「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ人が、工場の作業員、飲食店のホールスタッフ、小売店の接客など単純労働者として働く/留学生が許可された時間数(1週間に28時間以内)を超えて働く
アルバイトで雇用するとき
「在留カード」で確認するポイント
外国人をアルバイトで雇うときも、まずは「在留カード」を確認することから始めましょう。「永住者」、「日本人の配偶者」、「定住者」などの在留資格を持っている外国人は、どんな仕事でもできるので、日本人を雇う場合と同じと考えて大丈夫です。
他方、「留学」、「家族滞在」の在留資格を持つ外国人を採用するときは注意が必要です。
次の3つの条件をクリアしていれば、週28時間以内のアルバイトをすることが可能です。
留学・家族滞在の外国人をアルバイト採用するときのポイント
① 表面に記載の在留資格が「留学」または「家族滞在」となっていること
② 在留期限(満了日)がまだ到来していないこと
③ 裏面に「資格外活動許可」のハンコが押してあること
学校を卒業した留学生は採用できるの?
「留学」は、日本語学校、専門学校、大学、短大、大学院などに通学するための在留資格です。資格外活動の許可を得れば、学業に影響の出ない範囲で、週28時間以内のアルバイトをすることができます。他方、上記の学校を卒業した後は、留学ビザの在留期間が残っていてもアルバイトをすることができません。
「留学」の在留資格を持つ外国人を採用するときは、在学中か、すでに卒業しているかを必ず確認してください。なお、卒業後も就職活動を続ける場合は、「留学」ビザから「特定活動」ビザに変更します。「特定活動」の在留資格を持つ外国人は、資格外活動の許可を得れば、同様に週28時間以内のアルバイトが可能です。
留学生の状況によるアルバイトの可否
状況 | 在留資格 | アルバイトの可否 |
在学中 | 留 学 | 資格外活動許可を受けていれば、1週間に28時間までアルバイト可能 |
すでに卒業している | 留 学 | アルバイト不可 |
すでに卒業している | 特定活動 | 資格外活動許可を受けていれば、1週間に28時間までアルバイト可能 |
このように、アルバイト可能でも1週間に28時間以上働かせる場合や、すでに学校を卒業している留学生を雇うと、不法就労にあたります。
【特殊ケース】外国人が日本の大学の別科に在籍している場合
日本の大学の「別科」と呼ばれるコースに在籍している留学生がいます。半年くらいで修了する日本語履修プログラムなどがそれにあたります。別科を修了した留学生は、在籍中に就職が決まらなかった場合でも、特定活動ビザに変更することができません。
週28時間以内の就労制限はきっちり守ろう!
これまで述べてきたように、留学生が資格外活動としてアルバイトできる時間は「週28時間以内」(夏休みなどの長期休暇期間中は「週40時間以内」)という制限があります。複数のバイト先で働く場合は、すべての労働時間を合計して「週28時間以内」におさめなければなりません。
留学生の中には、「周りの友達もやっているから」、「先輩に大丈夫と言われたから」などの理由で、週28時間を超えてアルバイトをしてしまう人もいます。「複数の場所でアルバイトをすれば、週28時間を超えてもバレない」とウソの情報を信じている人もいます。
しかし、「外国人本人が大丈夫と言ったから」という理由で働かせても、不法就労に変わりはありません。外国人の中には、ルールを知らない人もいれば、違法と分かっていてもお金を稼ぎたい人もいます。リスクを負うことになるのは、受け入れた企業ですので、ご注意ください。
週28時間を超えてバイトしたことは、なぜバレるのか?
週28時間以内の制限を超えてアルバイトをしたことは、在留資格の変更や更新のときに提出する住民税の課税証明書・納税証明書などに記載される収入額により、ほぼ確実に入管に知られます。それにより、留学ビザの更新が不許可となったり、卒業後に就職が決まったのに就労ビザへの変更が不許可になるケースもあります。
フルタイムで雇用するとき
外国人雇用でよく聞く「就労ビザ」とは?
外国人を雇用するには、いわゆる「就労ビザ」が必要です。しかし、厳密には「就労ビザ」という在留資格はありません。「就労ビザ」とは、外国人が日本で働くために取得する在留資格の総称です。2020年3月現在、在留資格は全部で28種類ありますが、このうち19種類が「就労ビザ」にあたります。
就労が認められる在留資格
(出所)新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組, 出入国在留管理庁[PDF]
「技術・人文知識・国際業務」の基礎知識
これらの就労ビザの中で最も在留人数が多いのは、約27万2,000人(2019年末時点)が取得している「技術・人文知識・国際業務」です。外国人雇用でも、「技術・人文知識・国際業務」がひとつの軸になりますので、この在留資格について詳しく説明します。
まず、基礎知識として、これまでの日本の外国人政策の軸は、専門的・技術的な能力が必要な仕事に就く外国人は積極的に受け入れるけれど、単純労働の仕事に就く外国人の受け入れは慎重に検討するという方針です。その視点から、入管が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を審査するとき、次の4点がポイントとなります。
「技術・人文知識・国際業務」の審査のポイント
審査のポイント①
申請する外国人が就職後に担当する業務内容が、在留資格で認められている活動か?
<「技術・人文知識・国際業務」で認められる主な職種>
文系:総務(経理、人事、法務など)、企画、商品開発、デザイン、広報、通訳・翻訳など
理系:システムエンジニア、プログラマー、研究開発、CADオペレーターなど
※ 飲食店、小売店等での接客、工事現場での作業など、いわゆる単純労働はできません。
審査のポイント②
外国人本人が、業務に必要な専門的技術・知識などを有していることを、学歴(学位/履修科など)から証明できるか?
審査のポイント③
受入れ企業の規模・実績から安定性・継続性が見込まれ、さらに本人の職務を活かせるための機会が実際に提供されるか?
審査のポイント④
外国人本人の報酬などが、日本人社員と比較して適当であるか?
規模が大きい企業は申請が簡単って本当?
本当です!外国人を雇用する企業は、規模ごとに4つのカテゴリーに分けられ、上位のカテゴリーの企業ほど、添付資料が少ない、審査期間が短いなど、優遇措置があります。
ただし、カテゴリー1、2の企業が、これまで書いてきたことを確認せずに、外国人を雇用できるというわけでは決してありません。企業の信頼により審査が簡易であるからこそ、適法な雇用であるかどうか慎重に確認すべきです。
【参考】カテゴリー1又は2の企業において就労する者について
カテゴリー1又は2の企業は一定の規模を有する企業であり、公表されている資料により、その活動の実態が明らかであること等から、同企業において就労する者に係る在留資格認定証明書交付申請については、本来提出を要するものを免除して提出書類を簡素化し、申請受理日から10日程度を目途として申請を処理するなど、審査の迅速化・簡素化を図っています。
(出所)カテゴリー1又は2の企業において就労する者及びその家族(配偶者又は子)に係る在留資格認定証明書交付申請手続の取扱いについて, 法務省入国管理局, 平成27年3月
外国人採用と在留申請の流れ
海外にいる外国人を採用する場合
海外にいる外国人を採用して日本に呼ぶ場合は、「在留資格認定証明書交付申請」という手続きをします。
「在留資格認定証明書」とは?
在留資格認定証明書とは、「この外国人は、日本で適法に在留資格を取得することができます(在留許可の審査は完了しています)」という証明書のようなものです。在留資格認定証明書を持っていると、外国人が母国の日本大使館領事館でスムーズに査証(ビザ)をもらうことができます。
日本にいる留学生を新卒採用する場合
日本にいる留学生を採用する場合は、「在留資格変更許可申請」という手続きをします。
【参考】留学ビザから就労ビザへの変更については、こちらの記事をご参照ください。
日本で働く外国人を中途採用する場合
すでに日本で働いている外国人を転職により中途採用する場合は、次のとおり状況により在留申請の手続きが変わります。
当事務所のサービス
ご相談(コンサルティング)
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※ 相談後、ご依頼をいただいた場合は相談料分を値引きしますので、実質無料で相談することができます。
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外国人雇用に関する在留申請
申請手続き | 行政書士報酬(税別) |
在留資格認定証明書交付申請 | 120,000円 |
在留資格変更許可申請 | 120,000円 |
在留期間更新許可申請(転職あり) | 100,000円 |
在留期間更新許可申請(転職なし) | 40,000円 |
就労資格証明書交付申請 | 100,000円 |
資格外活動許可申請 | 40,000円 |
在留カードの受け取りのみ | 10,000円 |
※ 上記は目安ですので、具体的な見積もりについてはお問い合わせください。
※ 当事務所は、虚偽申請や不法就労の可能性がある案件は一切取り次ぎません。
外国人雇用アドバイザリー(顧問契約)
対象
〇 はじめて外国人を雇用する企業
〇 法律に違反しない外国人雇用のビジネスモデルを構築したい企業 など
プラン | 顧問料月額(税別) |
定期相談(月1回程度)/簡易な資料作成 | 50,000円 |
定期相談(月1回程度) | 30,000円 |
その他 | 応相談 |
お問い合わせ
外国人雇用に関する質問、ご相談、見積りのご依頼などございましたら、以下の「お問い合わせフォーム」からお気軽にご連絡ください。