永住許可申請とは?
「永住許可申請」は、日本に来て一定年数の生活をしてきた外国人が、在留資格「永住者」に変更する場合に行う手続きです。
海外にいる外国人が初めて来日するとき、最初から永住許可申請を行うことはできません。
CALICO LEGAL行政書士事務所は、永住許可申請に専門的に取り組んでいます。
この記事では、「永住許可申請ができるか?」を知りたい外国人向けに、永住許可申請の条件とポイントをわかりやすく説明します。
1. 「永住者」になるメリット
「永住者」になると、次のようなメリットがあります。
永住者になるメリット
① 在留期間の更新をしなくてよい
② 転職や起業が自由にできる
③ 住宅ローンの審査が通りやすい(金利が安くなる)
これらのメリットにより、日本での生活がより安定したものになります。
2. 永住許可の条件
「永住者」にはメリットもありますが、その分、他の在留資格の申請よりも審査が厳しいです。特に、2019年7月から提出する資料が大幅に増えました。税金や社会保険をきちんと支払っているかについて、こまかくチェックされます。
これから永住許可申請を行う場合は、出入国在留管理庁が公表している『永住許可に関するガイドライン』を理解して、その内容に沿った申請を行うことが必要です。
▼『永住許可に関するガイドライン』, 法務省
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html
ここからは、『永住許可に関するガイドライン』に書いてある3つの要件について解説します。
(1)素行善良要件
まず、『永住許可に関するガイドライン』にどのように書いてあるか、見てみましょう。
素行が善良であること
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
※ ただし、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には、適合することを要しない。
日本の法律やルールを守って生活してするという意味ですが、具体的には次のような条件をクリアしていることが求められます。
- 懲役、禁錮、罰金などの前科がないこと
- 重大な違反行為がないこと
- 軽微な違反行為(道路交通法違反など)を何度も繰り返していないこと
- 申請内容に虚偽がないこと
▼よくある質問
車を運転していて、駐車禁止、右折禁止など、軽微な交通違反が数回あります。永住申請に影響ありますか?
軽微な交通違反でも、何度も繰り返していると永住申請が不許可になる可能性があります。
具体的に何回だとダメかという基準はありませんが、3〜4回繰り返している場合は注意が必要です。
(2)独立生計要件
ここでも、『永住許可に関するガイドライン』にどのように書いてあるか、見てみましょう。
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
※ ただし、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には、適合することを要しない。また、難民の認定を受けている者、補完的保護対象者の認定を受けている者又は第三国定住難民の場合には、適合することを要しない。
日本の生活保護などの支援制度に頼らず、安定した生活を送れる十分な収入があるという意味です。
『永住許可に関するガイドライン』に具体的な金額は明記されていませんが、実務では、独身の人の場合は「年収300万円」が目安です。
配偶者や子どもなどの扶養家族がいる場合は、1人につき60万円を加算し「年収300万円+α(60万円×扶養家族の人数)」が目安です。
もちろん、目安の金額以下なら必ず不許可になるというわけではありません。私が担当した案件でも、年収が若干低くても許可が出たケースがあります。
しかし、目安の金額を大きく下回る場合は、預貯金や不動産などの資産があってもフォローできない可能性が高いです。
個別のケースについて相談をご希望の方は、このページの一番下にある「問い合わせフォーム」からご連絡ください。
▼よくある質問
配偶者(夫または妻)に収入がある場合、審査で有利になりますか?
配偶者が「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザで在留している場合は、世帯で合算した年収額をもとに審査します。
配偶者が「家族滞在」で在留している場合は、収入が合算されないので、申請人の年収だけで審査の基準をクリアすることが求められます。
子どもを出産して育児休業を取りました。その期間の年収が下がってしまいましたが、審査で不利になりますか?
育児休業期間後に仕事に復帰できることが明確であれば、審査で不利にならない可能性が高いです。
当事務所でも、育児休業期間中に永住申請を提出して、許可になった人は多くいます。具体的にどのような書類を提出するかはケースによってちがいますので、不安のある方は気軽にご相談ください。
(3)国益要件
いよいよ3つ目、最後の要件です。国益要件はア〜エまで4つあるので、『永住許可に関するガイドライン』にどのように書いてあるか、1つずつ見てみましょう。
その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
永住許可申請を行うためには、原則として、日本に10年以上住み、そのうちの5年以上は就労していること必要です。なおかつ、その年数は「引き続き」であることが求められています。
▼よくある質問
仕事の出張で日本を離れて海外にいた時期があります。永住申請に影響ありますか?
永住許可の要件は、「引き続き」10年以上日本に住んでいることです。長期間の海外出国があると、”引き続き”といえなくなります。
『永住許可のガイドライン』に具体的な日数は書いてありませんが、実務では「年間100日」を超えると審査に影響が出る可能性があります。仕事の出張が理由の場合は、「海外出張命令」の文書を提出するなど、説明をするとよいでしょう。
また、2020年〜2022年にかけて、新型コロナウイルスの影響で海外渡航期間が長くなったという相談が増えています。このケースは、在留が継続していたとみなされる可能性が高いです。
くわしくは、ご相談ください。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
ここでは、次のようなことが求められています。
- 懲役、禁錮、罰金などの前科がないこと
- 税金を遅れずに支払っていること
- 社会保険(国民年金、国民健康保険)に加入し、保険料を遅れずに支払っていること
- 出入国在留管理局への届出や手続きを怠っていないこと
特に注意が必要なのが、税金と社会保険料の支払いです。会社が給料からの天引きで払っている場合は大丈夫ですが、自分で支払っている人は、一度でも支払いの遅れがあると永住申請が不許可になる可能性があります。
支払ったときの領収書は保管して、申請前によく確認しましょう。
▼よくある質問
過去に国民年金を払いそびれてしまったことがあります。申請前にさかのぼって支払えば、大丈夫ですか?
国民年金のほか、税金、国民健康保険料は、遅れずに支払わなければなりません。期日に遅れずに支払ったことを証明するため、「領収書」の提出が求められます。
過去にさかのぼって支払っても、期日に遅れたことになるため、永住申請が不許可になる可能性があります。
なお、学生時代のことなど、審査対象期間よりも前の事情は審査に影響しません。
転職したとき、インターネットで入管へ届出をするのを忘れていました。永住申請に影響がありますか?
入管への届出に漏れがあると、永住申請の審査が進まなくなります。申請する前に、届出を済ませましょう。
なお、これらの届出は遅れても、審査への影響は少ないです。
ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
(注1)本ガイドラインについては、当面、在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱うこととする。
ここでは、在留期間が「最長」であることが必要と書いてあります。最長の在留期間は「5年」ですが、実務では在留期間が「3年」以上の在留資格があれば、永住申請ができます。
▼よくある質問
もともと「3年」の在留資格を持っていたのですが、在留資格を変更したら「1年」になってしまいました。永住申請に影響ありますか?
変更後の現在の在留資格が「1年」なら、永住申請はできません。
「3年」になるのを待って、申請しましょう。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
最後のこの要件も抽象的ですが、エボラ出血熱やペストのような感染病にかかっていないこと、ゴミ屋敷で生活していないことなど、公衆衛生上の問題がないことが求められています。
3. 原則10年在留に関する特例
ここまでが永住許可申請の基本編です。ここからは、「(3)国益要件」の特例として、日本に10年住まずにもっと短い年数で永住申請ができる特例について、説明します。
先ほどと同じように、『永住許可に関するガイドライン』を見ながら進めていきましょう。
申請人が「日本人・永住者の配偶者」の場合
(1)日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること
申請する外国人が「日本人(または永住者)の配偶者」の場合、結婚生活が3年以上続き、かつ、日本に住んで1年で永住申請ができます。
▼よくある質問
私の配偶者は「高度人材ポイント80点以上」ですので、来日1年で永住申請を行う予定です。私は「家族滞在」ですが、一緒に申請することができますか?
一緒に申請することはできますが、「不許可」になる可能性が高いです。
高度人材ポイントによる優遇措置は、あくまで申請人本人だけに該当します。「家族滞在」の配偶者まで優遇はされませんので、日本に3年程度住んでから永住申請をする方が確実です。
くわしくはご相談ください。
申請人が「定住者」の場合
(2)「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること
申請する外国人が「定住者」の場合、日本に引き続き5年以上住むことで永住申請ができます。
ここでも「引き続き」が求められますので、海外出国が長期になると不許可になる可能性があります。
申請人が「高度人材ポイント 70点以上(80点未満)」の場合
(6)出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。) に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として必要な点数を維持して3年以上継続して本邦に在留していること。
イ 永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められ、3年以上継続して70点以上の点数を有し本邦に在留していること。
申請する外国人が「高度人材ポイント70点以上(80点未満)」の場合、日本に引き続き3年以上住むことで永住申請ができます。
申請人が「高度人材ポイント80点以上」の場合
(7)高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として必要な点数を維持して1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められ、1年以上継続して80点以上の点数を有し本邦に在留していること。
申請する外国人が「高度人材ポイント80点以上」の場合、日本に引き続き1年以上住むことで永住申請ができます。
申請人が「特別高度人材外国人」の場合
(8)特別高度人材の基準を定める省令(以下「特別高度人材省令」という。)に規定する基準に該当する者であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「特別高度人材」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として特別高度人材省令に規定する基準に該当することが認められること。
申請する外国人が「特別高度人材外国人」の場合、日本に引き続き1年以上住むことで永住申請ができます。
「高度人材ポイント80点以上」と同じ扱いですので、上記の図をご参照ください。
▼よくある質問(高度人材ポイント70点以上 ・80点以上・特別高度人材)
現在の在留資格は「技術・人文知識・国際業務」ですが、高度人材ポイント80点以上をクリアしています。「高度専門職1号(ロ)」に変更してからでないと永住申請はできませんか?
申請時点と1年前の時点で高度人材ポイント80点をクリアしていれば、「高度専門職1号(ロ)」に変更しなくても申請できます。
「技術・人文知識・国際業務」のまま申請する方がスムーズです。くわしくはご相談ください。
申請時点と3年前の時点では「高度人材ポイント70点」をクリアしています。しかし、1年前の時点では年齢のポイントの関係で65点でした。この場合、永住申請はできますか?
永住申請の審査では、申請時点と3年前の時点でのポイントを見ます。途中でポイントが下がっても審査に影響しませんので、1年前の時点で65点でも永住申請が可能です。
▼ 【永住申請Tips】高度人材ポイントと永住申請の関係
よくある質問(まとめ)
これまでお問い合わせいただいた方からの、永住許可申請に関する質問をまとめました。
永住許可申請の無料診断ツール
当事務所では、永住許可申請をご検討されている方が申請の要件を満たすかについて、無料で診断します。
以下の「永住許可申請の無料診断ツール」をご活用ください。
すごく丁寧で親切です。 本人にもお客様に対しても誠実で嘘偽りなく全力な姿勢がとても良かったです。 人と人との巡り合わせは、運に近いのですが、今回、藤井さんと会って話を進めていく中で藤井さんに会えた私たちは運が良かったと思いました。 忙しい中いろいろとありがとうございました。 今後ともよろしくお願い致します。
Date: 2019年7月
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