7月2日(土)、とあるライブに行って来ました。場所は、都営新宿線の曙橋から直ぐのところにある「Back In Town」、カントリーやブルーグラスなどを中心にアメリカンミュージック演奏されているレストランです。
当日のライブの名前は「O Sister Jamboree」。娘がお世話になっている方からお誘いを受け、その方が出演するというライブを聴きに行ったものです。
「O Sister Jamboree」は、今年で4回目を迎える、女性の方が中心メンバーとなって、ブルーグラスを演奏するという企画で、セミプロ、学生バンドを含む8バンドが出演していました。
楽器は、フィドル(カントリー・ブルーグラスでは、バイオリンのことをこう呼びます。)、フラ・マン(フラット・マンドリン)、ドブロ(特にスクエア・ネックのリゾネーターギター)、バンジョー(ブルーグラスの花形楽器)、ギター、ウッドベースなど、アコースティック・エアーに溢れていました。私は本場アメリカのブルーグラス・コンサートを見たことがありませんが、いわゆる、アメリカのファミリーバンドの競い合いの雰囲気が醸し出されているように思いました。それぞれのバンドが腕前を競い合い、また、和気藹々としたアットホームな雰囲気が感じられました。
プロの方はもちろん、アマチュアの方も非常にお上手な方ばかりでしたが、特に目を引いた演奏者の方が何名かいました。
フラ・マンでは、娘のバンド仲間の方はもちろんですが、他のバンドの方で本当に上手な方がいました。まるで、手が蛇のようにネックに巻きついて、指がフレットを移動していく、神の手のような指さばきに驚かされました。
ある方のギターにも感動しました。その方は、もちろんブルーグラスの雰囲気はあるのですが、何かしら日本的ないい雰囲気がある方でした。体を右に左に、前に後ろにスウエーしながら弾いていらっしゃいました。リズムに乗り、気持ち良い演奏です。なんばグランド花月か浅草の演芸館あたりで、往時の横山ホット・ブラザーズか宮川左近ショウのギター弾きの方の演奏を見ているような気がしました。トイレに立った時に、その方とお話しする機会があり、「味のある演奏ですね。」と話しかけましたら、その方は謙遜されていました。
このほか、ウッドベースを弾かれていた女性の方や、外国の男性の方も、素晴らしい演奏をされていました。ドブロやバンジョー弾きの皆さんの演奏も素晴らしかったです。
コンサートの最後は、出演した女性の方、全員の大合唱となり、まさに文字どおり「O Sister Jamboree」となりました。
ブルーグラスを次の世代につなぐ
「O Sister Jamboree」の演奏者の多くは、私と同年代の方でありました。若い方が少ないことは本当に残念ではありますが……、音楽の性格上、仕方ないと思います。そうしたなか、今回のコンサートに、東北大学ブルーグラス同好会の学生バンド及びそのOB/OGバンドが参加していたことには、大変驚きました。
本場アメリカでは、創成期の名だたるブルーグラス・ピッカーも全て亡くなり、今はサード・ジェネレーションの時代です。ロックに押され、往時の勢いがないように思えます。ところが、東北大学のキャンパスでは、ブルーグラスがロックの向こうを張って、脈々と息づいています。若い皆さんの演奏は素晴らしく、特にバンジョー弾きの方は、現役もOBも、いわゆるアール・スグラッグス奏法を余すことなく披露されていました。
東北大学ブルーグラス同好会には約150人も在籍しているそうです。どうしてそんなに人気があるのか、不思議な気がしますが、東北大学ではブルーグラスは決してマイナーな音楽でないようです。
ブルーグラスが結ぶ点と線
私が、ブルーグラスと初めて関わりを持ったのは、中学時代のことです。当時、NHKラジオで毎週土曜日の午後から、軽音楽の放送があり、ハワイアン、トリオ・ロス・パンチョスなどのラテン(ボレロ)、ウエスタンを聴いていました。初めて買ったレコードは、ハンク・ウィリアムスの「ジャンバラヤ・カウライジャ」のシングル盤、2枚目は、「ブラザーズ・フォー」のコンパクトLP盤(グリーン・フィールズ、グリーン・スリーブス、遥かなるアラモ など入っているもの)でした。そのうち、ウエスタンからブルーグラスの方に派生して、レスター・フラットとアール・スグラッグスやビル・モンローなどの音楽も好きになり、ブルーグラスも好きになりました。
今回、私をライブにお誘い下さったRさんのバンドの一曲が名曲「Red Wing」でした。日本橋三越新館のグリル満天星で初めてお食事した際、お互いの趣味のブルーグラスの話になりました。好きな曲を訊かれたとき、迷わず「Red Wing」と答えました。「Red Wing」を初めて聴いたのは、チェット・アトキンスの演奏でした。いろいろな人やスタイルで歌われ演奏されていますが、今も彼の演奏が最も好きです。今回、まさか演奏されると思ってもみませんでしたので、大好きな曲をこのようなライブ会場で聴くことができ、最高のプレゼントを貰ったような気がして清々しい気分になりました。Rさんは、フラ・マンを弾いていらっしゃいました。
もう一つ、ブルーグラスの名曲を挙げるとするなら、チャーリー・モンローの「柳の園で」でしょうか。8カ月になる孫にこの曲を聴かせたところ、今ではすっかりお気に入りの曲となり、喜んでリズムをとって楽しんでいます。
私をこのコンサートにお招きくださいましたRさん、ありがとうございました。このブログを借りてお礼申し上げます。
(文/西川文明)