藤井 祐剛
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大学卒業後、教育関係企業、法テラス(法務省所管機関)での勤務を経て、2016年3月に行政書士登録。慶應義塾大学文学部卒業、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科修了(MBA)。
取材・記事作成:山下柚実
(作家/五感生活研究所代表)
外国人のニーズに応えて、ビザ申請、永住許可申請、外国人の会社設立などの分野に力を入れているCALICO LEGAL 行政書士事務所代表の藤井祐剛さん。
行政書士になったきっかけ、外国人の方たちをサポートする仕事に積極的に取り組んでいる理由、今考えていることについて、ズバリお聞きしました。
行政書士の仕事を始めたきっかけは、
あるショックな出来事からでした
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行政書士事務所で「CALICO=三毛猫」というネーミングは珍しいと思いますが、
どんな意味を込めたのですか?
藤井
正直に言うと、私がネコ好きだからです。
家で飼っているネコが三毛猫なんですよ(笑)。
ただ「ネコ好き」というだけでは物足りないので
もう一つ説明を加えると・・
三毛猫は、黒、白、茶色の3色でできています。
異なる肌の色や、さまざまな価値観の人がまじりあうような、
そういう仕事をしていきたいという想いを事務所名に込めました。
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では、藤井さんが行政書士になったきっかけは何だったのでしょうか?
藤井
私が行政書士試験に合格したのは2003年です。
しかし、当時は司法試験に挑戦していたこともあり、
すぐには行政書士に登録しませんでした。
大学を卒業してから、教育関係の企業や
法テラス(国が設立した法的トラブルの相談窓口・法務省所管)、
市民協働ステーションなどに勤務し、さまざまな経験をしました。
行政書士の仕事をはじめる大きなきっかけは、
2015年の年末にあった、私にとってかなり衝撃的な出来事です。
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それはどんな出来事だったのですか?
藤井
ある日、実家の母親から、
すぐに帰って来て欲しいと連絡がありました。
実家に行ってみると、外壁に無数の足場が組まれ、
なにかの工事が始まっていました。
なにごとかと思い、母に聞いてみると、
祖父が悪徳リフォーム業者に騙され、
必要のない工事の契約をしてしまったことがわかりました。
そのときの実家の様子(2015年11月頃)
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おじいさんは、どんな状況でしたか?
藤井
当時は70代後半で、ときどき物忘れはしますが、
認知症というわけではありませんでした。
私の祖父は中学校の社会科の教師をしていて、
孫の私は、子ども心に祖父をとても尊敬していました。
その祖父が、「騙されてしまった」と大きなショックを受け、
自信やプライドを喪失して、、、
体が一回りも小さくなってしまったような感じがしました。
祖父のあの時の姿は、今でも目に焼き付いています。
祖父と一緒にいる、子どもの頃のわたし
私は、行政書士の資格を持っていたけれど
そのときまで実務をしたことはありませんでした。
ただ、何か自分にできることはないかと考えて、
本やネットでいろいろ調べ、
生まれて初めてリフォーム会社に内容証明郵便を出しました。
「必要のない工事」であることを立証し、
「不法・不当なことには泣き寝入りしない」という
強い意志を相手にはっきり伝えました。
結果として、契約を解約し、
工事代金の全額を返してもらうことができました。
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その時、一番強く感じたことは何だったでしょう?
藤井
自分の主張を伝える書類の作り方ひとつで、
結果を変えることができるということです。
そして、行政書士という仕事の意義に気付きました。
私のケースでは、工事代金は全額返ってきました。
でも、祖父が失ってしまったプライドや自信は、
決して取り戻すことができませんでした。
これまで一生懸命に生きてきて、
なぜ騙されて、傷つかなければならないのだろう・・・。
もし、世の中に同じような人がいるなら、
私が持っている資格や知識を問題解決のために使いたい
と考えるようになりました。
日本にいる外国人の方たちは、
行政的な手続きにとても苦労していると思います
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藤井さんが、外国の方をサポートしようと思った理由は何でしょう?
藤井
私は、外国人のビザ申請や永住権取得のお手伝いをすることで、
日本の行政と外国人の橋渡し役になりたいと考えています。
法テラス(法務省所管機関)で仕事をしているときに感じたことは、
普通に生活をしている人と、行政や法律との距離が
とても離れているということです。
役所の手続きは複雑ですし、
どこの窓口に相談すればよいのかもわかりにくい。
国の支援制度などを使う権利があっても、
情報が正しく伝わっていないことで、
利用できずにいる人もたくさんいます。
特に外国人は、行政サービスが後回しにされることもあり、
支援の網の目からこぼれ落ちることが多いと感じました。
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たしかに、行政の手続きは、日本人にとってもわかりにくいですよね。
藤井
はい、日本人ですら理解するのがたいへんなのですから、
外国人の方々はさらに苦労されていることでしょう。
言葉の問題、文化の違いというハードルもあります。
そうした問題を一緒に考えながら、
解決していくお手伝いがしたいです。
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相談者が来たら、まずどんなことから始めるのですか?
藤井
ビザ申請の相談のときは、次の3つのことを聞きます。
「日本に来てから現在まで、どんなことをしてきたのか?」
「どういうビザを申請したいのか?」
「この先、日本でどういうふうに暮らしていきたいのか?」
日本での生活については、ビザ(在留資格)の種類のほか、
税金、社会保険の支払い状況、入管への届け出、
運転免許の有無、事故等の履歴などを細かく聞きます。
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この先、日本でどういうふうに暮らしていきのたいかも聞くのですか?
藤井
はい、これからのライフプランを聞きます。
「〇〇のビザをとりたい」「永住権を申請したい」など、
いろいろなご要望が出てきますが、その背後には
「日本でどんな風に暮らしたいか」というイメージがあると思います。
何年後はこうしたい、こんな仕事をしたい、結婚して永住したいなど、
一人一人の生活の目標や未来のイメージを理解することは、
行政書士としてとても大切な作業だと思います。
ビザを申請することと、日本でどのように暮らしたいのかということ、
その2つを組み合わせていくと問題の解決もスムーズになります。
早めに必要な条件を知ることができれば、
解決できることも増えていきます
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永住申請の依頼が多いとのことですが、
不許可になるケースもあるのですか?
藤井
はい、永住申請は、専門家がやれば
必ず許可が取れるというわけではありません。
なぜかというと、必要な書類はすべて
「過去」についての書類だからです。
過去は、今から変えることができません。
たとえば税金や社会保険の未払いがあったとすれば、
それを「払いました」と事実を変えることはできません。
少し前に、日本に来て10年経ったから
自分で永住申請をしてみたけれど不許可になってしまった
と相談に来た人がいました。
調べてみると、過去に、社会保険の未払いがありました。
その人は、支払うお金がなかったのではなく、
社会保険の制度を知らなかったため、未払いになっていました。
もし、もっと前に、永住申請に必要な条件を正確に知っていたら、
こんなやっかいな問題は発生しなかったかもしれません。
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つまり、早めに必要な条件を知っていると、結果も違ってくる?
藤井
はい、申請の直前ではなく、もっと早い段階で、
永住申請に必要な条件を正しく知っていれば、
結果は変わっていたかもしれません。
とはいえ、最初から「永住しよう」と思って
日本に来る人ばかりではありません。
来日して3年、5年と経過し、
目安となる在留10年が近づいてきたとき、
「私は永住権を取れるかもしれない」と思い立って、
申請を考え始めるケースがほとんどです。
でも、その時にはすでに手遅れになっていることもあるんです。
だから、将来的に永住権を申請する可能性が少しでもある人は、
どういう条件をクリアしなければならないのか、
事前にきちんと知っていて欲しいです。
このWEBサイトでも、
そうした情報を積極的に発信していきたいです。
「日本に来て良かった」と、心から思ってもらいたい。
それが私の気持ちです
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外国人コミュニティの中には、たくさんの口コミ情報があります。
それでは不十分ですか?
藤井
SNSなどの外国人コミュニティには、
正確ではない情報が広がっていることがあります。
また、ある人には当てはまるけれど、
別の人には該当しないということもあります。
外国人にとって大切なことは、
誰かに聞いたあいまいな情報ではなく
日本の制度やルールについての正しい知識を持つことです。
正しい知識を持たずに判断することは、リスクがあります。
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いったん専門家に相談し「申請は無理」と断られた人にも、
可能性はあるのですか?
藤井
私の事務所に来る相談者の中には、
すでに他の専門家に相談して
「あなたの場合、申請は無理です」と
断られたという人もいます。
でも、それで絶対に無理かどうかは調べてみないとわかりません。
たとえば、実際に私がお手伝いさせていただいた
李さんや王さんのケースでは、
他の行政書士から「あなたの永住申請は無理」と言われたそうです。
しかし、詳しく話を聞いていったら方法が見つかり、
申請した結果、許可を取ることができました
ですから、一度専門家に断られた、という方も
諦めずに相談して欲しいと思います。
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外国人ひとりひとりの目線に立って、
一緒になってさまざまな可能性を探すわけですね。
謝井
はい。一緒に考えながら問題を解決することを
大事にしたいと思っています。
専門家だからと上から目線ではなくて、
依頼者と同じ目線に立って取り組んでいきたいです。
依頼者の多くは日本が好きで、
日本語を一生懸命勉強してきた方です。
みなさん真剣ですし、
うまく手続きが進んだ時には
心から「ありがとう」と言ってくれます。
そのとき、私もこの仕事をやってよかったと心から感動します。
やり甲斐を感じる仕事ですから、
これからも一生懸命取り組んでいきたいと思っています。
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この先、取り組んでいきたいことはありますか?
藤井
まずは、このサイトを充実させて、
情報をわかりやすく伝えていきたいです。
体験者の話を通して大切なことを発信したり、
刻々と変化していく法律の最新情報なども
得られるようにしていきたいと思っています。
「必要な情報ならここにあるよ」、「見たら役立つよ」と
外国人の方々の間に口コミが広がっていったら嬉しいです。
せっかく日本が好きで来日された方々に、
「日本に来て良かった」、「日本で働いて幸せだった」
と思って欲しいーーそれが私の気持ちです。
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