謝 可忻 さん
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台湾の致理科技大学企業管理学科を卒業後、20歳で来日し日本語学校に入学。
東京観光専門学校ホテル学科国際ホテル専攻卒業、日本語能力試験1級合格(2009年12月)。
ホテル関係、不動産関係などの転職を経て、2020年9月永住者ビザを取得。
取材・記事作成:山下柚実
(作家/五感生活研究所代表)
永住申請について細かく知る機会は少ないので、
体験者の情報を多くの人に知って欲しいです。
台湾出身の謝可忻さんは、来日10年、就労5年で
永住権を取得できたモデルケースです。
外国人材の転職が難しい中で、見事に希望の仕事を見つけ
ステップアップしてきた謝さん。
永住権を申請中に日本人と結婚、というのも実にエネルギッシュ。
インタビューにも夫とふたりで来てくれました。
明るく元気なエネルギーは、
未来の扉を開く大きな力になるのかもしれません。
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永住権を取りたいと考えるようになったきっかけは何だったのでしょう?
謝
来日して4~5年経った頃に、
永住権の申請という制度があることを知りました。
具体的な条件を調べてみて、「10年間日本にいること」や
「年収が一定以上という基準がある」などのルールを知りました。
学生の時はビザの更新を毎年していましたし、
就職した後も、3年や5年ごとに
在留資格を更新しなければなりません。
普段は日本人の友達がたくさんいて、
自分も日本人のつもりで生活しているのに、
更新の時期が来ると「ああ、私は外国人なんだ」
「更新できなかったらどうしよう、もう日本にいられないかも」と
心配になりつらい気持ちでした。
入国管理局での手続きも、時間がかかってたいへんです。
永住者になったらそうした手間がなくなると思い、
申請しようと決めました。
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謝さんは日本語がとても上手ですが、
それでも行政書士に手続きを依頼した理由は何でしょう?
謝
書類を取り寄せたり、入国管理局に申請に行くことで
時間がたくさんかかってしまいそうだったので。
そのために有給をとるのはもったいないため、
専門家に頼みたいと思いました。
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家の近く、ということで「中央区」で検索したのですね。
謝
そうです。やはり直接会って
いろいろとお話できる方がいいな、と思いました。
はじめて藤井さんに会ったとき、
すぐに「この人に頼みたい」と感じました。
名刺にネコという言葉があって
「ネコが好きな人に悪い人はいないかな」って(笑)。
あと、LINEの顔写真に息子さんが一緒に映っていて、
アットホームな雰囲気も気に入りました。
永住権の申請のためにはいろいろ個人的なことを
相談しなければならないので、
相談する行政書士さんの雰囲気が固かったり
本音を出しにくい感じだと、
申請も円滑に進まないかもしれないと想像し、
藤井さんにお願いしました。
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実際に永住権許可を取るまで、どれくらいの時間がかかりましたか?
謝
最初に相談に行ってから、許可が下りるまで1年間くらいです。
書類を提出してから許可をもらうまでは半年ほどでした。
入管のホームページを見ると、
申請に必要な書類の数はそう多くはないと感じました。
でも、提出してからさらにその書類を裏付けるための
追加資料が必要になることもあって、かなり時間がかかります。
そういうことを事前に知る機会は少ないので、
ぜひ体験者の情報を一人でも多くの人に知って欲しいです。
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申請までに気をつけていたことや心がけていたことはありますか?
謝
とにかく日本のルールを守ること。
具体的には、税金や年金などをちゃんと払うことです。
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転職についてはどうでしょうか。不利になるのですか?
謝
私の場合は、永住申請中に転職しましたが、
特に問題なく申請が通りました。
転職のタイミングについては、いろいろなケースがあるかもしれません。
「仕事を辞めて3ヶ月以内に次の仕事が決まらないと在留資格がなくなる」という話を聞いたこともあります。
それぞれの人によって違うと思うので、
詳しい専門家にアドバイスをもらう方がよいと思います。
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台湾と日本の違いについて、感じていることはありますか?
謝
日本人はやんわりとした表現を好むので、
時々わかりにくいことがあります。
台湾人には空気を読むみたいな感覚はなく、
自分の気持ちをはっきりと表現しますので。
例えば、「難しいです」という言葉を日本人が使う時は
断っている意味合いが強いけれど、
外国人が使う時は「難しいけれど出来る」という
意味あいの方が強いですね。
そういう違いはあります。
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日本でこうしたらうまくいくよ、というヒントはありますか?
謝
相手にあわせるのではなくて、
ありのままの自分でつきあうこと。
その方が結果としてうまくいくと思います。
相手もいずれは外国人ということで理解してくれるし、
その方が心からの友達もできると感じています。
永住権申請をきっかけに結婚。
本当に大きな人生の節目となりました
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永住権の申請準備をしていた間に、ご結婚されたそうですね?
謝
そうなんですよ!
3年程おつきあいしていた日本人の彼氏がいまして
最初は「友人」として身元保証人になってもらうつもりでした。
でも、もし永住権を申請するのであれば
きちんと結婚した方が身分も安定していいのかな、
と思うようになりました。
二人で話しあって、結局「日本人の婚約者」という形で
書類に名前を記しました。
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申請がきっかけで、結婚を決めることになった、ということですか。
謝
そういうことになりますね(笑)
永住権申請は、本当に大きな人生の節目となりました。
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二人の出会いについてもう少しお聞きしてもいいですか?
夫
出会ったのは英会話喫茶です。
たまたま同じテーブルの中に彼女がいて、
初めて話をした時、とても自然で言葉も流れるようだし
僕より語彙も多いし、日本人だと思い込んでいたんです。
その後、自己紹介した時初めて台湾の人だと知り、
「エッ」と驚きました(笑)
謝
そのあと仲間たちで飲みに行ったりして、
だんだん仲良くなっていったという感じです。
夫
僕自身も留学の経験があって、
外国人の女性とつきあうことには抵抗がないんです。
というか、外国人の方がストレートに
気持ちを言葉で表現してくれるので、
余計な気を遣わなくて済みます。
つきあっていて気持ち的に楽なんですよね。
日本人だと言葉にしないで忖度したり、
「女心をわかって」みたいなタイプの人もいますが
僕はそういうのがあまり得意でなくて(笑)。
むしろズバっと言ってくれた方がいい。
同じように考えている日本人の男性も、実は結構多いんじゃないかな。
謝
私も彼との生活はとても楽ですよ。
台湾人は屋台で食事をすることが多いので
料理があまり上手くない。
その上、日本人の男性は母親の料理の味にこだわりがあって、
「おふくろの味を作って欲しい」と言う人も多いようだけれど、
彼にはそういう欲求がまったくないので助かります(笑)。
夫
僕は、「妻だからこうして欲しい」みたいな
思い込みがあまり無いんです。
だからお互いに相性はぴったりだと思います。
つきあってからの3年間、ほとんど喧嘩していないし。
謝
でも最初、彼に結婚願望は無かったんです。
「結婚に何か意味があるの?」って言ってましたから。
私も半ば結婚は諦めて、「二人で暮らせればいいや」と思っていました。
夫
今回の永住権申請がきっかけで、
結婚について話が出て、
いわば「トドメを刺された」(笑)感じです。
謝
たしかに永住申請の時、
配偶者がいると身分が安定するということはありますが、
だからと言って私から無理に結婚を押し通したわけではなくて(笑)。
じっくり話し合った結果、結婚する方がいいと彼が考えてくれたんだと思います。
夫
いつか子どもは欲しいので、
きっと結婚してよかったんだと思いますよ(笑)。
「妥協しない」こと、
そしてスピード感が転職成功の決め手
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転職に苦労している外国人が多いと聞きますが、
謝さんは転職するたびにステップアップし
やりたい仕事に近づいていらっしゃるように見えます。
成功するための工夫やコツはありますか?
謝
そうなんです。永住申請許可を得ると
日本人と同じ金利でローンが組めるようになりました。
以前は外国人向けのローンしか組めず、
金利がとても高くて無理でした。
私が購入したのは中古マンションですが、
まさに「私のお城」そのもの。
今、インテリアを自作しています。
ホームセンターで素材を買ってきて、
自分で板を切ったり足を付けたり塗装したりするのがすごく楽しい。
ちょっと疲れますけれど(笑)。
ビンテージ風の超オシャレな部屋を目指して頑張っています。
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転職に苦労している外国人が多いと聞きますが、
謝さんは転職するたびにステップアップし
やりたい仕事に近づいていらっしゃるように見えます。
成功するための工夫やコツはありますか?
謝
「妥協しない」ということを心に決めています。
英語と中国語と日本語の三カ国語ができるので
求人数はたくさんありますが、私としては
「年収を落とさない」「キャリアを上げていく」という
2点だけは絶対に譲らないように、こだわってきました。
あとは、「これだ!」という仕事が見つかった時は
時間をかけて悩むのではなく、
すぱっと思い切って仕事を辞め、気持ちを切り替えることかな。
スピード感が大切だと思います。
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永住権をとってから、生活は変わりましたか?
謝
何よりも精神的にストレスがなくなり、気持ちが楽になりました。
「もしこのまま日本にいられなくなったらどうしよう」
ということを考えずに済むようになったことが一番良かったです。
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永住権をとったことについて台湾の家族や友達たちは?
謝
うらやましがっています。
日本国民になったわけではないけれど、
長く滞在できるので家族も安心してくれています。
▼ 謝可忻さんのインタビュー動画