ビザ申請のトリセツ

飲食店の外国人材雇用|外食業分野の「特定技能」ビザ申請

2019年9月13日

2019年4月の入管法改正で、在留資格「特定技能」(特定技能ビザ)が新設されました。この制度により、今後5年間(2019年~2024年)で、外食業で働く外国人が最大5万3,000人、日本にやって来ます。
近年、飲食店で働く外国人の数は急速に増えていますが、大半は日本語学校・大学・専門学校などに通う留学生のアルバイトのため、1週間に28時間までと労働時間が制限されます。
一方、特定技能ビザを取得する外国人は、日本人と同じように労働基準法のもと制限なく働くことができます。

当事務所は東京都内でいち早く、特定技能外国人を支援する登録支援機関に登録したため、国内の飲食店、外国人本人、国外の外国人を送り出す機関などからの問い合わせを多く受けています。

この記事では、特定技能ビザを活用して新たに外国人を採用したい飲食店の方、アルバイトの留学生を卒業後に雇用したい飲食店の方など、外食業分野にポイントを絞って特定技能ビザの最新情報を解説します。

 

在留資格「特定技能」(特定技能ビザ)とは?

他の就労ビザとどう違うの?

これまでの日本では、就労ビザで働くことができるのは、専門的な技術・知識・能力を持つ外国人に限られていました。しかし、深刻な人手不足の状況に対応する必要性に迫られ、接客、清掃、荷物運搬など、専門性がそれほど高くない仕事でも即戦力となる外国人を受け入れるために創設されたのが、「特定技能」ビザ制度です。

下の図のように、技能実習よりは専門性が高いけれど、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザよりは専門性が低いという位置づけです。

(出所)新たな外国人材の受入れについて, 法務省入国管理局, 平成31年3月

このような位置づけのため、他の就労ビザでは認められている家族の帯同は基本的に認められず、また、永住許可申請の条件となる日本での在留期間には算入されません。特定技能外国人を雇用する際には、このあたりの点についても、外国人本人にご説明ください。

上の図のように、特定技能には「1号」とその上位資格にあたる「2号」の2種類があります。しかし、現在のところ、外食業分野では「2号」の設置は予定されていないため、この記事では「特定技能1号」のことを「特定技能」と表記します。

どういう仕事ができるの?

外食業の特定技能外国人は、⽇本標準産業分類の「飲食店」または「持ち帰り・配達飲食サービス業」に分類される事業所で就労することができます。
具体的には、次のようなお店が該当します。

就労できるお店の具体例

⾷堂、レストラン、料理店、喫茶店、ファーストフード店
テイクアウト専⾨店(店内で調理した飲⾷料品を渡すもの)
宅配専⾨店(店内で調理した飲⾷料品を配達するもの)
仕出し料理店

キャバクラなどの「接待飲食等営業」を営むお店では就労できません。

また、従事する業務は、次のように想定されています。飲食店で行うほぼ全ての業務に携わることができると考えられます。

従事できる業務の具体例

飲食物調理
接客
店舗管理
上記業務の関連業務(原料の調達・受入れ、配達作業 etc.)

どういう外国人を採用できるの?

特定技能ビザを取得できる外国人には、次の2つのパターンがあります。

① 技能実習2号を良好に修了した外国人
② 日本語能力試験と技能測定試験に合格した外国人

現状、外食業分野では技能実習制度は行われていないため、「② 日本語能力試験と技能測定試験に合格した外国人」を採用することになります。

日本語能力試験って何?

特定技能外国人には、飲食店で問題なく働くことができるだけの基本的な日本語能力が求められます。
具体的には、次のどちらかの試験に合格していることが必要です。

①「国際交流基⾦⽇本語基礎テスト(JFT-Basic)」【国外】
②「⽇本語能⼒試験(JLPT)N4以上」【国外、国内】

「国際交流基⾦⽇本語基礎テスト(JFT-Basic)」は国外で実施される試験ですので、日本に在留している外国人の方は「⽇本語能⼒試験(JLPT)N4以上」を受験することになります。

特定技能ビザ取得に必要な日本語能力は、試験に合格しているかどうかだけで判断されます。日本での生活が長い方や日本の大学を卒業している方でも試験の合格が必須ですので、事前に受験するようにしてください。

=参考URL=

技能測定試験って何?

外食業分野では、「外⾷業技能測定試験」が実施されます。試験の概要は、次のとおりです。

【試験の内容】
⾷品衛⽣に配慮した飲⾷物の取扱い、調理及び給仕に⾄る⼀連の業務を担い、管理することができる知識・技能を確認する。
また、業務上必要な⽇本語能⼒⽔準についても本試験により確認する

【試験科⽬】
「衛⽣管理」、「飲⾷物調理」、「接客全般」について知識、判断能⼒、計画⽴案能⼒(簡単な計算能⼒を含む)を測定する筆記試験とする。
全ての科⽬を受験することを要すが、「飲⾷物調理主体」または「接客主体」を選択すれば、配点について傾斜配分を受けることができる。

2019年4月に実施された外食業技能測定試験の試験結果は次のとおりです。

受験者数:460人
合格者数:347人
合格率 :75.4%

合格者数を国別に見ると、ベトナムが最も多く203人、次いで中国が37人、ネパールが30人という順番でした。

当事務所に相談に来た技能測定試験合格者の数人の方に試験の難易度を聞いてみたところ、「日本語が理解できれば簡単だと思う」ということでした。

試験を実施する一般社団法人日本フードサービス協会のホームページで、学習用テキストが公開されていますので、受験される方はご活用ください。

外食業技能測定試験の今後のスケジュール

2019年秋以降、外食業技能測定試験の実施が本格化します。2019年度だけで7,000人近い合格者が出ることが予想されます。
最新の試験情報をまとめましたので、ご確認ください。

国内試験

第4回試験

実施時期と試験地:
2019年11月18日 長岡・東京・広島・熊本
2019年11月19日 さいたま・東京・名古屋
2019年11月20日 東京・神戸

定  員:3日間で合計3,400人程度
募集開始:2019年10月2日~
合格発表:2019年12月上旬

第5回試験

実施時期:2020年2月中旬
試験地 :札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・大坂・広島・福岡
定  員:3,500人程度
募集開始:2020年1月上旬~
合格発表:2020年3月上旬

国外試験

・フィリピン(2019年10月上旬募集開始予定、11月上旬試験実施予定)
・ミャンマー(2020年1月以降実施予定)
※ この他、ベトナムについては、試験実施環境が整い次第、試験を行う予定。

 

特定技能外国人の採用から勤務開始までの流れ

日本語能力試験と外食業技能測定試験に合格した外国人の採用を決めたあと、勤務開始までに必要な手続きの流れは、次のようになります。
青字のところが、特定技能外国人を雇用する場合に特に必要となる手続きです。

特定技能外国人の採用から勤務開始までの流れ

このように、外国人を就労させるだけではなく、支援することが求められます。支援については、外国人を受入れる企業自身が行うか、または、登録支援機関に委任することができます。

【参考】飲食店の特定技能外国人への生活支援については、こちらの記事をご覧ください。

飲食店の外国人雇用|特定技能外国人の生活支援のポイント

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当事務所が登録支援機関になった理由

当事務所は、登録支援機関(19登-000017)に登録しています。全国で17番目、東京都内の行政書士事務所では一番早く登録しました。
その理由は、技能実習の管理団体や人材紹介業を営む会社など、大手の登録支援機関による支援の行き届かない外国人の方の助けになりたいと思ったからです。

飲食店の場合、すでにアルバイトとして働いている留学生、友人・知人の外国人の方など、人間関係がある方に働いて欲しいというケースが考えられます。そのとき、本人が日本語と技能の試験に受かったけれど、「登録支援機関が見つからない」、「支援委託費が高額すぎる」などの理由で雇用を実現できないとなると、とても残念です。

特定技能ビザのことで分からないことがある方は、飲食店の方でも、外国人ご本人でも、お気軽にご相談ください。

 

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