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外国人を雇用したい事業者必見!新しい在留資格「特定技能」のポイント

2019年2月3日

2018年12月8日、国会で改正出入国管理法が成立しました。これにより、2019年4月から、単純労働を含む外国人労働者の受け入れを拡大する新しい在留資格「特定技能」がスタートします。

ここでは、日本での就労を希望する外国人の方や、外国人の雇用を検討している事業者の方向けに、新しい在留資格「特定技能」について、わかりやすく解説します。

こんな方におすすめ

  • 飲食店、カフェ、ホテルなどへの就職を考えている留学生
  • アルバイトの留学生を卒業後にフルタイムで雇用したい飲食店の経営者
  • 家族滞在で日本にいるが、フルタイムで働きたいと考えている外国人の方
  • 新しい在留資格「特定技能」について知りたい方

新しい在留資格「特定技能」が生まれた背景

「特定技能」の最新情報は法務省のホームページに随時アップされていますが、具体的な運用については、まだ明らかになっていません。(※ 2019年3月11日記事作成時点)。そのため、2019年4月の具体的な運用開始に備えて、制度の趣旨や背景を理解しておくことが重要です。

在留資格「特定技能」の意義

日本はこれまで、単純労働に従事する外国人の受入れを認めてきませんでした。これに対して、新しい在留資格「特定技能」により、一部の業種について認められるようになります。そのため、「移民政策ではないか?」という論調で語られることもあります。

しかし、在留資格「特定技能」という新制度の背景にあるのは、「日本の経済・社会基盤の持続可能性を阻害している深刻な人手不足をどう解消するか?」という経済界からの要望です。

2018年12月25日の閣議決定に出された「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」という資料の中では、在留資格「特定技能」の意義について、次のように書かれています。

特定技能の在留資格に係る制度の意義は、中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築することである。

(出所)「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」, 法務省, 2018年12月25日閣議決定
[PDF]https://www.moj.go.jp/content/001278434.pdf

この点について、日本の労働市場の動きと外国人労働者数の推移から分析していきます。

日本の労働市場の状況

日本の労働市場の状況を見ると、2018年の有効求人倍率は年平均1.61倍となり、これは1973年以来45年ぶりの高水準とのことです。同様に完全失業率も2.4%と1992年以来26年ぶりの低さです。これらの状況から、日本企業での人手不足が強まっていることが分かります(図1参照)。

【図1】完全失業率、有効求人倍率(1948年~2017年)年平均

(出所)独立行政法人労働政策研究・研修機構ホームページ
[URL]https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0301.html

東京ハローワークが公表している業種別の有効求人倍率を見ると、特に「保安」、「接客・給仕」、「建築・土木」、「介護」、「調理」などの仕事で6倍を超え、都内ではこれらの業種で人手不足が深刻であることが分かります(表1参照)。

【表1】東京における主な業種の有効求人倍率(2018年12月)

職種 有効求人倍率
保安の職業 20.32倍
接客・給仕の職業 9.57倍
建築・土木技術者等 9.01倍
介護サービスの職業 7.46倍
飲食物調理の職業 6.62倍

(出所)東京ハローワーク, 2018年12月
[PDF]https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-hellowork/content/contents/000374818.pdf

日本の外国人労働者数の増加

それでは、人手不足を解消するには、どのような方法があるでしょうか?

主に、①女性の活用、②シニア世代の活用、③ITの活用、④外国人の活用という4つが考えられます。この中で、④外国人の活用について見ると、ここ数年で外国人労働者が劇的に増え、2017年には約128万人と2008年の約2.5倍となりました。

その内訳を詳しく見ると、週28時間以内のアルバイトしかできない「資格外活動」と、日本の技術を開発途上国に伝承することを目的とする「技能実習」の2つが約40%を占めていることが分かります(図2参照)。

【図2】日本における外国人労働者数の推移

(出所)「新たな外国人材の受入れに関する在留資格『特定技能』の創設について」, 法務省, 2018年10月12日
[PDF]https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai2/siryou2.pdf

「資格外活動」と「技能実習」の外国人は、時間的な制約や制度の趣旨から、フルタイムで単純労働にあたる仕事をすることはできません。そのため、人手不足を根本から解決する人材として期待することは困難です。

このような人手不足と外国人労働者数の増加という労働市場の状況を受けて、2018年6月15日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」(骨太方針)では、新たな外国人材の受入れについて、次のように述べています。

新たな外国人材の受入れ

  • 中小企業・小規模事業者をはじめとした人手不足の深刻化への対応
  • 一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れるため、就労を目的とした新たな在留資格を創設
  • 出入国管理及び難民認定法を改正し、政府の基本方針を定めるとともに、業種別の受入れ方針を策定
  • 求める技能水準は、受入れ業種ごとに定め、日本語能力水準も、業務上必要な水準を考慮して、受入れ業種ごとに定める
  • 政府の在留管理体制を強化するとともに、受入れ企業又は登録支援機関(業界団体等)による生活ガイダンス、相談対応、日本語習得支援等を実施
  • 在留期間の上限は通算5年とし、家族の帯同は基本的に認めないが、滞在中に高い専門性を有すると認められた者について、在留期間の上限が無く、家族帯同を認める在留資格への移行措置を整備する方向

(出所)「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」, 内閣府, 2018年6月15日
[URL]https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/decision0615.html

骨太方針のこの記述を受けて制度化されるのが、在留資格「特定技能」です。

在留資格「特定技能」により就労できる14業種

政府による検討の結果、人手不足が特に深刻と考えられる次の14業種を「特定産業分野」として、在留資格「特定技能」による外国人労働者の就労が認められることになりました。

  1. 介護業
  2. ビルクリーニング業
  3. 素形材産業
  4. 産業機械製造業
  5. 電気・電子情報関連産業
  6. 建設業
  7. 造船・舶用工業
  8. 自動車整備業
  9. 航空業
  10. 宿泊業
  11. 農業
  12. 漁業
  13. 飲食料品製造業
  14. 外食業

 

徹底解説!新しい在留資格「特定技能」とは?

在留資格「特定技能」には、相当程度の知識と技能を要する仕事に就く外国人向けの「特定技能1号」と、より熟練した技能を要する仕事に就く外国人向けの「特定技能2号」の2つが創設されることが決まっています。

特定技能1号とは?

特定技能1号は、不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格と定義されます。

それでは、どの程度の技能水準と日本語水準が必要なのでしょうか?

この点について、政府は次のような方針を公表しています。

【表2】特定技能1号の技能水準と日本語能力水準

技能水準 日本語能力水準
受入れ分野で即戦力として活動するために必要な知識又は経験を有することとし、業所管省庁が定める試験等によって確認する。 ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、受入れ分野ごとに業務上必要な能力水準を考慮して定める試験等によって確認する。

※技能実習2号を修了した者は、上記試験等を免除

本記事作成時の2018年2月3日段階では、具体的にどのような試験が実施されるかは公表されていません。ここで大切なことは、在留資格「特定技能」は、人手不足を解消するための制度であることです。そうだとすれば、技能水準を測る試験も日本語水準を測る試験も、いわゆる”落とすための試験”にはならないと考えられますので、制度開始と同時に在留資格「特定技能」を申請したいと考えている方は、ご安心ください。

また、日本語水準については、目安として日本語能力試験N4程度と言われています。しかし、「受入れ分野ごとに業務上必要な能力水準を考慮」して定めると書かれていますので、日本語能力試験よりは易しい試験が行われる可能性が高いと考えられます。なぜなら、たとえば、お客様との綿密なコミュニケーションが必要な介護職、接客での会話が必要な飲食店での勤務、それほど多くの会話を必要としない建設業など、受入れ分野ごとに求められる日本語スキルが異なるからです。

ポイント

・在留期間の上限は通算5年
家族の帯同を認めない
・許可された活動の範囲内で転職を認める
・原則として直接雇用(分野の特性に応じて派遣形態も可能)

特定技能2号とは?

特定技能2号は、同分野に属する練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格と定義されます。

特定技能2号は、制度開始後数年間は受け入れない方針を示しているため、「熟練した技能」とはどの程度の水準なのか?、判定にどうような試験が課されるのか?など、具体的なことはまだ公表されていません。

ポイント

・在留期間の上限はなく、更新可能(3年、1年、6ヶ月)
家族の帯同が可能
・許可された活動の範囲内で転職を認める
・原則として直接雇用(分野の特性に応じて派遣形態も可能)

特定技能1号の技能試験はいつ始まる?

特定技能1号の技能水準を評価する試験は、次のようなスケジュールでの実施が予定されています(※ 2019年2月3日現在)

業種  国内実施 国外実施  開始時期(予定)
介護 未定 年6回程度 2019年4月
ビルクリーニング 年1~2回程度 年1~2回程度 2019年秋以降
素形材産業 検討中 年1回程度 2019年度内
産業機械製造業 検討中 年1回程度 2019年度内
電気・電子情報関連産業 検討中 年1回程度 2019年度内
建設 年1~2回程度 年1~2回程度 2019年度内
造船・船用工業 随時 随時 2019年度内
自動車整備 実施なし 年1回程度 2019年度内
航空 年数回程度 年数回程度 2019年度内
宿泊 年2回程度 年2回程度 2019年4月
農業 随時 年2~6回程度 2019年内
漁業 実施予定 年3回程度 2019年度内
飲食料品製造 年10回程度 年10回程度 2019年10月
外食業 年2回程度 年2回程度 2019年4月

(出所)「特定技能の在留資格に係る制度の運用要領」, 法務省, 2018年12月25日
[PDF]https://www.moj.go.jp/content/001279756.pdf

特定技能1号の外国人への支援

技能実習制度では、日本で働く外国人の方たちが、パワハラ、セクハラ、低賃金、長時間労働など、劣悪な労働環境で働くケースも報告されました。そこで、新制度ではこのような事態が起こらないよう、外国人労働者を受入れる企業に対して、外国人への支援を義務付けています。

具体的には、特定技能1号の外国人労働者を受け入れる企業(特定技能所属機関)、または、受入れ企業から支援を委託される登録支援機関は、次のような支援を行います。

外国人材への支援内容

  • 外国人に対する入国前の生活ガイダンスの提供
  • 入国時の空港等への出迎え及び帰国時の空港等への見送り
  • 保証人となることその他の外国人の住宅の確保に向けた支援の実施
  • 外国人に対する在留中の生活オリエンテーションの実施(預貯金口座の開設及び携帯電話の利用に関する契約に係る支援を含む。)
  • 生活のための日本語習得の支援
  • 外国人からの相談・苦情への対応
  • 外国人が履行しなければならない各種行政手続についての情報提供及び支援
  • 外国人と日本人との交流の促進に係る支援

(出所)「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」, 法務省, 2018年12月25日閣議決定
[PDF]https://www.moj.go.jp/content/001278434.pdf

 

参考資料

本記事を作成するにあたり、参考にした資料を記載します。皆さまが新しい在留資格「特定技能」を理解するためにご活用いただければ幸いです。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai2/siryou2.pdf
「新たな外国人材の受入れに関する在留資格『特定技能』の創設について」, 法務省, 2018年10月12日

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出入国在留管理庁ホームページ
「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」, 法務省, 2018年12月25日閣議決定

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