少子高齢化による労働人口の減少に伴い、人手不足が叫ばれるようになりました。宿泊業も働き手の不足に悩んでいる業界のひとつです。どんなに景気が回復したところで、人の手が足りないままでは満足なサービスの提供ができず、宿泊ビジネスとして成り立たなくなります。
ホテルや旅館などの生き残りや成長のためにも、新しい発想による人材確保は急務です。今回は宿泊業界における日本の現状と、外国人労働者を雇用することのメリットをご紹介します。
活性化する観光業界!右肩上がりの旅行者数でホテルはピンチ!
観光業界は今、景気のいい状態にあると言えます。特に日本を訪れる外国人旅行者数は2013年に1,000万人を突破し、2018年には3,000万人を超えました。
訪日外国人旅行者数の推移
(出所)日本政府観光局プレスリリース, 平成30年12月19日
政府はオリンピック・パラリンピック開催イヤーの2020年に4,000万人、2030年には6,000万人の外国人観光客数を目指しています。
観光業界の動向は宿泊業界にも影響を与えています。中国からの旅行者が急増して、新宿などを中心に首都圏の宿泊施設が満杯になるなど、大都市における客室稼働率は高水準をキープしています。
また、観光を地方創生につなぐ様々な施策により、3大都市圏以外の地域へ訪問する外国人旅行者数が増加し、地方の延べ宿泊数はここ5年ほどで約2.8倍に増えました。伸び率に対応するだけの受け入れ体制が求められるため、ホテル・旅館など、宿泊分野で働く人材の確保が必要不可欠です。
三大都市圏及び地方部における外国人延べ宿泊者数比
しかし、日本の宿泊業界では、慢性的な人手不足が続いています。宿泊分野での有効求人倍率を見てみると、2017年度で6.15倍。宿泊業や飲食サービス業の欠員率は5.4%で、約3万人の人手不足が生じていると推測されます。また5年後を想定した場合、現状のままでは全国で10万人規模の人手不足に陥ると見込まれています。
従業員が不足していては、客室を満足に稼働させることは不可能です。宿泊業界からは「おもてなし」は日本人でなければ出来ないという声を聞くこともありますが、このままではせっかくのビジネスチャンスを逃すことにもなります。宿泊施設のフロント、接客、レストランサービス、企画・広報など、適性な人材を海外に求めることも一つの手です。
2019年4月にスタートした新たな在留資格「特定技能」により、宿泊業界でも単純労働に従事する外国人を雇用することができるようになります。これは、大きな転機になる可能性があります。なお、宿泊分野での特定技能外国人の受け入れは、今後5年間で最大2万2,000人と試算されています。
宿泊業界における外国人雇用のメリット
ここまで述べてきたように、宿泊業界で外国人を雇用することで人手不足を解消できる可能性があります。
また、ホテルや旅館は、ただ眠るだけの場所ではありません。旅先のくつろぎの場であり、ビジネスから解放されほっと一息できる滞在場所、非日常を味わえる特別な空間でもあります。
それだけに、ホテルにおけるサービスや客室内の雰囲気づくりには細心の心配りが大切です。予約管理などはテクノロジーで解決できるようになっても、お客さまがホテルに求めるのは効率化や自動化ばかりではないはずです。ホテルスタッフである人へのニーズは、これからも変わらず存在するのでないかと思われます。
多言語対応が可能
日本に暮らす外国人の場合、日本語でのコミュニケーションも自然にとれ、母国語のほかに英語も堪能な人材もいて、接客の面でも大いに力を発揮してくれそうです。ホテルを訪れる海外からのお客さまへのスムーズな対応、文化や習慣の違いから来るトラブルも未然に防ぐことができます。
宿泊客の満足度の向上
外国人を雇用して人手不足に対処することで、たとえば、清潔感が求められる客室内の清掃スタッフの採用にも力を入れることができます。また、アジア諸国から来る人たちが持っている「人懐っこさ」や「思いやりの心」は、宿泊客の満足度につながるでしょう。
他のスタッフへの波及効果
日本に働きに来る外国人は、日本人よりも生活のための大切な労働であるとの意識が強い場合が多いです。ハングリー精神のある外国人と一緒に働くことで、他の日本人スタッフの仕事にもプラスの作用をもたらすことでしょう。
外国人が日本で働く理由
外国人が日本で働く理由を聞いて見ると、主に次のようなものが挙げられます。
- 日本の文化が好きだから、日本語を身に付けたい
- 海外でキャリアを積んでスキルアップを狙いたい
- 自分の国より給料が高い
- 母国よりリスクが少ないかつ安全で暮らしやすい
外国人を採用するときは、ビザ(在留資格)に注意!
外国人を採用する際は、在留資格の確認をしっかり行った上で、労働条件をわかりやすく説明してから雇用契約を結びましょう。
たとえば、それまでアルバイトとして働いている留学生を正社員として採用する場合は、入国管理局に「留学ビザ」から「就労ビザ」への変更申請の手続きを行うことが必要です。外国人本人は、就職が決まれば自動的に就労ビザが取得できると勘違いしている場合もあるのでご注意ください。
また、2019年5月現在、ホテル・旅館などの宿泊施設でフルタイムで働くことができる就労ビザは、次の2種類です。
宿泊業界で正社員として働くことが出来るビザ
技術・知識・国際業務ビザ
外国人が大学・専門学校で学んだ専門知識や職歴を活かして、専門職として働く場合に取得できるビザです。上限なく更新することが可能で、家族の帯同が認められます。
特定技能ビザ
外国人が学歴や職歴に関係なく、単純作業も含めて幅広い仕事に従事する場合に取得できるビザです。上限5年までで、家族の帯同は認められず、日本に滞在する期間は永住権取得のために必要な年数には算入できません。
ビザ申請や外国人雇用に関する手続きについて詳しいことをお知りになりたい方は、相談無料ですのでお気軽にお問い合わせください。